鷲宮神社の土師一流催馬楽神楽――翁三神舞楽之段
◆はじめに
この舞は未見である。埼玉県鷲宮の鷲宮神社の土師一流催馬楽神楽の第十段「翁三神舞楽之段(をきなさんじんぶがくのまい)」は舞楽を武学と同音であり相通じるとしている。平和なときであってもどんな陰謀があるかもしれないから、平和なときこそ武学が大事であるとする舞。着面の三人(翁、千歳[せんざい]、三番叟(さんばそう)による舞。それぞれ日の丸の扇を持って舞う。三神は住吉三神の表筒男命、中筒男命、底筒男命とする。
歌 喜びの舞なれば 一舞舞おう おうさえおうさえおうという おさおさおう 千歳や ちとせの 千歳や 万歳や 万代の 万歳や
◆武州鷲宮神楽資料
カタカナはひらがなに改めた。
第十 翁三神舞楽之舞 同三人
翁三は表筒(うはつゝ)男命、中筒(なかつゝ)男命、底筒男命、是住吉同体なり。猿楽にては翁は天照太神、千歳は八幡太神、三番叟は春日大明神と云、翁の事は至て重き伝秘のあることなり、伝に云舞楽は武学なり、音に通す、安に居て危きを忘れざる心、舞楽と書こと敵に実の名を知せぬ意にして、軍法の常なり、前段に食を以てし、爰(ここ)に武を以てす、都て国政は食と武にあり、武は矛を止むるの義、此矛の二字を合せて武の一字を作るもの也、治乱はもと一にして不ニ、或は治の内に乱を含み、乱の内に治を含むものなれば、いかに御世平安なりといへとも戦を忘るゝ時は必ず危し、譬ば天地より虎狼を生ずるが如く、いかなる悪人ありて隠謀を企つることもはかり難し、凡文武は時代に依て優劣あるもの也。文道を第一にして其次に武道を兼て治ることあり、又武道を専にし文道をは治むることあり、帥に勝は大将と兵との和合によるなれは此神楽を奏する、形を見ても察すへきこと也。
◆参考文献
・「日本庶民文化史料集成 第1巻 神楽・舞楽」(芸能史研究会/編, 三一書房, 1974)pp.348-349
・鷲宮催馬楽神楽パンフレット
記事を転載→「広小路」
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