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2020年2月 2日 (日)

鷲宮神社の土師一流催馬楽神楽――五穀最上国家経営之段

◆はじめに
 埼玉県久喜市鷲宮の鷲宮神社の土師一流催馬楽神楽の第九段「五穀最上国家経営之段(ごこくさいしやうこくかけいえいのまい)」は五穀で稲を最上とする。五穀が実り、国が豊かに栄えることを表わしている。着面の二人による舞。それぞれ倉稲魂命(うかのみたまのみこと)と保食(うけもち)命を表わす。倉稲魂命は三番叟(さんばそう)の面を着け、三方、扇、鈴を持つ。保食命は種壺、扇、鈴を持って舞う。通称「種蒔き」という。国家経営は国づくりのことである。

歌 豊かなる 七つの道の みつぎもの 海山かけて 定めおきてき

鷲宮神社・土師一流催馬楽神楽・五穀最上国家経営之段
鷲宮神社・土師一流催馬楽神楽・五穀最上国家経営之段
鷲宮神社・土師一流催馬楽神楽・五穀最上国家経営之段
鷲宮神社・土師一流催馬楽神楽・五穀最上国家経営之段
鷲宮神社・土師一流催馬楽神楽・五穀最上国家経営之段
鷲宮神社・土師一流催馬楽神楽・五穀最上国家経営之段

◆武州鷲宮神楽資料
 カタカナはひらがなに改めた。

第九 五穀最上国家経営之舞 同二人

 五穀最上は稲也、稲は命の根と云、中略なり、其米を蒔いて国土を豊にするのぎ、依て種かしとも云也。営営は凡て百姓を安輯するの事業、いはゆる国作の義也、尤農は政の根本にして国民を治るに先第一に食物を足やうにして其上に道を教也、君は民を安くするを勤とし、民は君を養ふ道を業とす、かく上下互に職をつとむる故に天下静也、いかなる明主にても一人の力にて国家を治め玉ふことならず、君臣民は衣食住の如し、唯人民は身分限を弁(わきまへ)て、少しも驕慢のふるまひなく、謙下質素を本とし、敬て国禁を守り、誠実、正直に其産業を励ては富栄て、身は下位に在ても其意は上位にひとしかるべし、伊弉諾尊日の三天の位を悟り玉へ、また天照神、保食神の身より生する所の五くさの物、其外農業の助となるものを取よせ玉ひ、則業、稗、麦、豆は陸田種子とし、稲を以て水田種子とし、蚕の道まで得玉へて、耕作の道を万民に教へ給しより以来、衣食とみたりて飢渇の愁なし、仍て保食神、倉稲魂命に比す豊年を祈る神楽也。

◆参考文献
・「日本庶民文化史料集成 第1巻 神楽・舞楽」(芸能史研究会/編, 三一書房, 1974)p.348
・鷲宮催馬楽神楽パンフレット

記事を転載→「広小路

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