備後東城荒神神楽能本――文殊菩薩能
◆はじめに
広島県比婆郡東城町戸宇の栃木家蔵本に所蔵された「文殊菩薩ノウ」では、文殊童子が竜女が蛇体の苦しみを逃れたいと訴えるのを聞き入れて法華経を読誦する内容である。
◆寛文本
「文殊菩薩ノウ」に手を入れてみた。詞章が崩れて意味がとれない箇所はそのままにしてある。カタカナはひらがなに改めた。
「文殊菩薩ノウ」
一 抑々(そもそも)御前に罷り立(たつ)たる神化をば如何なる□□(破損)す 我須弥(しゆみ)のはんふくに住まい仕る文殊(もんしゆ)童子とは我が事にて候
一 欲界(よつかい)のじヱつく末世(まつせ)の衆生を済度(さいど)せんとて立ち寄りて候 あれに見ヱたるは蛇女と見たり 何処(いずく)の人にて候ぞ
○さん候 我自らは竜(りやう)女にて候 蛇体の苦しみを逃れさせて賜び給えと文殊菩薩を父のみ奉る申て
○さん候(ぞろう) 易き文あり此処(こゝ)に法華(ほけ)経五の巻の肝文(かんもん)に一ぢや(蛇か)ふとく(婦徳か)さほん天王 二蛇帝釈(たいしやく)三蛇(しや)まをう(王か) 四蛇(ぢや)天りゆ(竜か)上王 五蛇(ぢや)仏しゝそん(子子孫か)女子そくとく(即得か)成仏とそ文(妙文めうもん)にて成仏に為し申そ蛇身□□(破損)せ王へや
○さん候 文殊菩薩上(のちかヱ)にて苦し(ゆ)みを逃れ申こと有難(ありかた)く存(そん)じ奉り ○さ庭をろをなに入信(にふしん)あるべし 文殊大将軍(しやうくん) ○さん候諸仏云いもな方如来諸発心(ほつしん)かいせ文殊きやうりき(強力か)
一 仏とわ何を云(ゆ)らんこけ(苔か)衣(ころも) たゞ慈悲心(ちひしん)を説けとわ
一 仏にわ成るこそ易し なり難(にく)や姿わならで心こそなれ
◆参考文献
・「日本庶民文化史料集成 第1巻 神楽・舞楽」(芸能史研究会/編, 三一書房, 1974)p.182
記事を転載→「広小路」
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