備後東城荒神神楽能本――天照皇大神岩戸出
◆はじめに
広島県比婆郡東城町戸宇の栃木家蔵本に収録されている「天照皇大神岩戸出」はこの時代の岩戸神楽である。七番目ということは岩戸神楽自体が目標ではなかったことになる。
スサノオ命と争った天照大神は岩戸に籠り、神々が神楽を奏してお悦びになった天照大神が岩戸から出てくる……という内容である。
◆延宝本:天照皇大神岩戸出
「天照皇大神岩戸出」に手を入れてみた。詞章の崩れで意味がとれない部分はそのままにした(カタカナをひらがなに改めている)。
七 天照皇大神岩戸出
一 抑々(そもそも)御前に罷立尊法者は イザナギの遣わし目の尊とは某(それがし)がことにて候 天照太神ソサノ尾(スサノオ)の尊 御争いの段去(さて)太神岩戸に閉(とじ)籠り給うて 尊たち神楽を始(はじめ)て 太神悦(よろこび)有て岩戸を開き 日月の光四方に輝き 目出度所を舞納候
●神楽始り土唐(唐土)のほぐと云(いう)人白蓋(びつかい)を作(つくり)飾り 六十六人の尊法者太鼓(こ)は天満天神 笛はいしば(石破、石場、石庭か)の明神 杓拍子(しやくひやうし)はぎをんぎ女舞人は御子(みこ)社人法者
一 さいはいや 高原(たかまかはら)に入(いる)月(つき)を舞(まい)ぞ出(いだ)す目度(めてた)かりける
一 しやくざい(借財か)と尊天こん太(たい) 大日尊瑞祥(づいしやう)悔過(けか)慈眼(じげん)大神宮と開たり
扨(さて)日輪月輪舞出す 何も口伝有り
一 ちわやふる(千早ふる)岩戸と前の神楽にて 明けて尊の面(をもて)白さよ
一 甕(みか)の戸は 早開けにけり久方の 嬉しく思(おぼ)せ戸隠し(とかくし)の神
一 只今の祇神(神祇)神楽舞の手が面白(をもしろ)さに 岩戸を開みほこそ(顕れたり)
一 また倶利迦羅(くりから)岳(たき)頂き祀るや岳(たき)祀りの明神なり
一 天の雲切り更け行く月の光と共に葦原を薙ぎ払え
◆参考文献
・「日本庶民文化史料集成 第1巻 神楽・舞楽」(芸能史研究会/編, 三一書房, 1974)p.173
記事を転載→「広小路」
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