神楽甲子園を題材とした漫画――鈴見敦「放課後カグラヴァイブス」
鈴見敦「放課後カグラヴァイブス」1・2巻を読む。神楽甲子園を題材とした作品。そういう意味では「カグラ舞う!」に次ぐ作品。
生まれつき目つきが悪くて不良に絡まれやすい號は何事からも逃走するのがモットーだったが、転校した広島の高校で目力があると神楽部に勧誘され、そこで號は変わっていく……という内容。
作中、足の血豆が潰れてしまうシーンがあったが、剣道と同じ様にすり足なので足の皮が剥けやすいのだろうか。あれは痛いのである。
リアリティの無いのは玉塚神楽団の団長、惣史の父。玉塚神楽団は新舞も旧舞もやるようだが、実態はそこら辺のおっちゃんと変わらずあんな格式ばった人はいないだろう。梶矢神楽団なら別かもしれないが。
芸北神楽が出雲神楽が源流で石見に伝播して石見神楽となり、それが広島県芸北地方に伝播して芸北神楽となったという説明がされているが、どうだろう。石見神楽は大元神楽をルーツとしているが、大元神楽が出雲神楽に源流があるとは言えないはずである。出雲で能楽の様式を取り入れる以前から大元神楽はあっただろう。
「カグラ舞う!」は四コマ漫画なので、芸北神楽の躍動感を表現するのが難しい部分もあるが、「放課後カグラヴァイブス」は普通のコマ割りの漫画なので、芸北神楽の躍動感を表現するのに成功している。
残念ながら2巻10話で連載終了となってしまった。目標の神楽甲子園までたどり着いたのがせめてもの救いだろうか。同じく郷土芸能を題材にした「鬼踊れ!!」は仲間集めの段階で物語が終了してしまった。
分からないのは「ヴァイブス」の意味。英語ではVIBESらしいが、辞書で引くと、雰囲気とか気配といった意味なのである。
作者が関東在住なら関東の里神楽も見て欲しい。芸北神楽とは全然違うことが分かって楽しめるだろう。
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