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2019年11月21日 (木)

意外とエンタメ性に富んでいた――広島県比婆郡東城町戸宇の栃木家蔵本

「日本庶民文化史料集成 第1巻 神楽・舞楽」に収録された広島県比婆郡東城町戸宇の栃木家蔵本の延宝本と寛文本(荒神神楽能本)を精読する。栃木家本の研究は岩田勝の独壇場であるが、呪術性が強いかと思いきや、実際に読んでみると思っていたのとは違い、エンタメ性に富むものであった。やはり能本なのである。

詞章が崩れて意味がとれない箇所は多いし、確かに「松の能」「目連の能」「身売りの能」等、葬式神楽と関係があると思われる演目もあるけれど、「身売りの能」など読んでいて、この話はこの後どう展開するのだろうと思ったくらいである。岩田勝は栃木家本に呪術性を見い出そうとした。確かにそれは作品の解釈に寄与するが、それはこの豊穣な海の一部でしかなかったのではないか。

大体どこの神楽でも唯一神道流の改作を経た資料しか残っていないところに、この栃木家蔵本は両部神道的な要素が残っていて、その意味では奇跡的に残されていたということができる。

「日本庶民文化史料集成 第1巻 神楽・舞楽」は分厚い本で、普通のコピー機でコピーすると、綴じの部分に大きな影が出来て、その箇所が読めないことがあるので、「備後東城荒神神楽能本集」をコピーしたいなら国会図書館の遠隔複写サービスがいいだろう。

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