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2019年8月 3日 (土)

海幸山幸と神楽

 ◆関東の太々神楽
 記紀のいわゆる海幸山幸神話は石見神楽では演目化されていないが、関東の太々神楽で「幸替の舞」として演目化されていた。太々神楽なので演劇化はされていない。儀式舞的なものに海幸山幸の物語が織り込まれている。

品川神社の太々神楽「幸替の舞」:山幸
品川神社の太々神楽「幸替の舞」:山幸
幸替の舞:海神から塩満玉を受け取る
幸替の舞:海神から塩満玉を受け取る
幸替の舞:山幸が攻めるも塩満玉の力で跳ね返される
幸替の舞:山幸が攻めるも塩満玉の力で跳ね返される
幸替の舞:降参した山幸
幸替の舞:降参した山幸

◆関東の里神楽
 2019年8月第一週の日曜日に横浜市松見町の八幡神社で横越社中の「山海交易」を鑑賞。「山海交易」は「言いつけの場」「取り替えの場」「喧嘩の場」「龍宮の場」「和合の場」と全部演じると四時間以上かかる大作だった。

 「山海交易」は海幸彦の釣り針が黄金の針であること、豊玉彦(龍神)とワダツミ神が別人格であること、ワダツミ神と赤目鯛とのバトルで黄金の針を取り戻すこと、最後に玉の内一つを海幸彦に授けて仲直りするといったところが原典との相違点。

山海交易・言いつけの場:山幸彦・ニニギ命・海幸彦
山海交易・言いつけの場:山幸彦・ニニギ命・海幸彦
山海交易:取り替えの場:弓矢と釣り竿を交換した海幸彦と山幸彦
山海交易:取り替えの場:弓矢と釣り竿を交換した海幸彦と山幸彦
山海交易:喧嘩の場:海で釣りをするも、赤目鯛に黄金の釣り針を取られてしまう山幸彦
山海交易:喧嘩の場:海で釣りをするも、赤目鯛に黄金の釣り針を取られてしまう山幸彦
山海交易:喧嘩の場:黄金の釣り針が失われていることに気づく従者のモドキ
山海交易:喧嘩の場:黄金の釣り針が失われていることに気づく従者のモドキ
山海交易:喧嘩の場:釣り針を無くしたのを知られまいと仮病を使う山幸彦
山海交易:喧嘩の場:釣り針を無くしたのを知られまいと仮病を使う山幸彦
山海交易:喧嘩の場:黄金の釣り針が失われたことに気づいた海幸彦
山海交易:喧嘩の場:黄金の釣り針が失われたことに気づいた海幸彦
山海交易:喧嘩の場:自分の剣を差し出して何とか事を収めようとする山幸彦だが海幸彦は聞かない
山海交易:喧嘩の場:自分の剣を差し出して何とか事を収めようとする山幸彦だが海幸彦は聞かない
困り果てたところに塩椎神が現れて山幸彦を龍宮へと導く
困り果てたところに塩椎神が現れて山幸彦を龍宮へと導く
山海交易:龍宮の場:豊玉彦(龍神)登場
山海交易:龍宮の場:豊玉彦(龍神)登場
山海交易:龍宮の場:豊玉姫登場
山海交易:龍宮の場:豊玉姫登場
山海交易:龍宮の場:山幸彦、竜宮の従者であるおかめさんから水を恵んでもらう
山海交易:龍宮の場:山幸彦、竜宮の従者であるおかめさんから水を恵んでもらう
山海交易:龍宮の場:豊玉彦に事情を話す山幸彦
山海交易:龍宮の場:豊玉彦に事情を話す山幸彦
山海交易:龍宮の場:ワダツミ神登場
山海交易:龍宮の場:ワダツミ神登場
山海交易:龍宮の場:海のあらゆる魚を探して黄金の釣り針を探す
山海交易:龍宮の場:海のあらゆる魚を探して黄金の釣り針を探す
山海交易:龍宮の場:赤目鯛登場
山海交易:龍宮の場:赤目鯛登場
山海交易:龍宮の場:ワダツミ神と赤目鯛のバトル
山海交易:龍宮の場:ワダツミ神と赤目鯛のバトル
山海交易:龍宮の場:ワダツミ神と赤目鯛のバトル
山海交易:龍宮の場:ワダツミ神と赤目鯛のバトル
山海交易:龍宮の場:山幸彦、汐満玉と汐乾玉を授かる
山海交易:龍宮の場:山幸彦、汐満玉と汐乾玉を授かる
山海交易:和合の場:山幸彦、黄金の針を海幸彦に渡そうとするが、中々渡さない
山海交易:和合の場:山幸彦、黄金の針を海幸彦に渡そうとするが、中々渡さない
山海交易:和合の場:汐満玉で海幸彦を溺れさせる山幸彦
山海交易:和合の場:汐満玉で海幸彦を溺れさせる山幸彦
山海交易:龍宮の場:降参する海幸彦
山海交易:龍宮の場:降参する海幸彦
山海交易:和合の場:山幸彦、玉の一つを海幸彦に与える
山海交易:和合の場:山幸彦、玉の一つを海幸彦に与える
山海交易:和合の場:仲直りした海幸彦と山幸彦
山海交易:和合の場:仲直りした海幸彦と山幸彦
山海交易:和合の場:山幸彦、勝利のポーズ
山海交易:和合の場:山幸彦、勝利のポーズ

◆あらすじ
 海幸(火照命:ほでりのみこと)は海の魚を、山幸(火遠理命:ほおりのみこと)は山の獣を狩って暮らしていた。あるとき兄弟は互いの狩りの道具を交換した。そうして火遠理命が釣りをしたところ、一匹も釣れずに釣り針を無くしてしまった。火遠理命は自分の剣を鋳潰して沢山の釣り針を作ったが、兄の火照命は元の釣り針がよいと受け取らなかった。困り果てた火遠理命が海岸に佇んでいると、塩椎神(しおつちのかみ)が海の向こうの海神の宮殿に行くことを教えた。塩椎神の作った舟で旅立った火遠理命は果たして宮殿に辿りついた。そうして井戸の傍らの桂の木の上に登っていると、水を汲みにきた下女が命の姿を見て、海神の娘の豊玉姫に知らせた。豊玉姫はとても麗しい青年がやって来たと父の神であるワダツミ神に知らせた。火遠理命と豊玉姫は結婚した。

 三年が経ったある日、火遠理命はここにやって来た訳を思い出して大きなため息をついた。それを見た豊玉姫が父の海神に告げた。海神がなぜ嘆いているのか訊いたので、火遠理命は事情をつぶさに話した。海神が海の魚を悉く呼びだすと、チヌが喉に魚の骨が引っかかって物が食べられないと訴えた。果して失った釣り針であった。海神は釣り針を兄に返すときに呪詛する様に教えた。

 火遠理命が故郷へ帰ることとなってワニが送ることになった。一尋(ひろ)ワニは自分なら一日で送ることができるといった。果してその通り一日で到着した。故郷に帰ってからの火遠理命は海神に教えられた通りに釣り針に呪いの言葉を掛けて兄に返した。それから兄の火照命は段々と貧しくなり、遂に攻めて来た。火遠理命は海神から授かった潮満玉と潮干玉を使って火照命を降参させた。火照命は弟の火遠理命に臣従した。

◆古事記
 古事記の該当部分を直訳調ながらも現代語訳してみる。

 そこで、火照命(ほでりのみこと)は海佐知毘古(うみさちびこ:海の獲物を得る男)として、ひれの大きな魚(大きな魚)、ひれの小さな魚(小さな魚)を獲り、火遠理命(ほをりのみこと)は山佐知毘古(やまさちびこ:山の獲物を得る男)として、毛の粗い獲物、毛の柔らかい獲物(様々な獣)を獲っていた。そうして火遠理命がその兄(の火照命)に「各々獲物を捕る道具を交換して使ってみたい」と言って三度請うたけれども(火照命は)許さなかった。そうではあるけれども、遂にやっと交換することができた。そうして火遠理命は海の獲物を得る道具で魚を釣ったが全く一匹の魚も釣れなかった。また、その釣り針を海に失ってしまった。ここで、その兄の火照命は、その釣り針を乞うて曰く「山の獲物を得る道具も、自分の道具、海の獲物を得る道具も自分の道具(自分の道具でなくてはうまく得られない)。今は各々の道具を返そう」と言ったときに、その弟の火遠理命が答えて曰く「自分の釣り針は魚を釣っていたが、一匹の魚も釣れずに、遂に海に失ってしまった」と言った。そうだけれども、その兄は強引に乞い徴収した。そこで、弟が佩(は)いている十拳(とつか)の剣(つるぎ)を破って、五百の(数多くの)釣り針を作って償ったけれども取らなかった。また、千もの釣り針を作って償ったけれども、(兄は)受け取らずに「何と言ってもその正真正銘元の釣り針を得たい」と言った。

 ここで、その弟(火遠理命)は泣いて憂えて海辺にいたときに、塩椎神(しほつちのかみ:潮流を司る神)が来て問うて「虚空津日高(そらつひたか:日を仰ぎ見る如く貴い、中空なる神)が泣き憂えている理由は何か」と言った。答えて「自分は兄と道具を交換してその釣り針を失ってしまいました。ここで(兄が)その釣り針を乞うために数多の釣り針で償ったけれども受けずに『やはり正真正銘元の釣り針が欲しい』と言った。そこで泣き憂えているのです」と言った。そうして塩椎神は曰く「私があなたの為に善い計略を為しましょう」と言ってたちまち無間勝間(まなしかつま:編んだ竹と竹との間が堅く締って隙間がない)の小舟を造って、その舟に載せて教えて曰く「自分がその舟を押し流したなら、暫く(そのままに)行きなさい。具合のよい潮路があります。ただちにその道に乗って行けば、鱗の様にずらりと建物の並んだ宮殿(があります)、それ綿津見神(わたつみのかみ)の宮です。その神の門に到ったら、傍らの井戸の上に神聖な桂の木があるでしょう。そこで、その木の上にいれば、その海の神の娘が見つけて互いに謀ってくれるでしょう」と言った。

 そこで、教えのままに少し行くと、十分にその言葉の様だった(その言葉通りであった)。ただちにその桂の木に登っていた。そうして、海の神の娘の豊玉毘売(とよたまびめ)の下女が美麗な器を持って水を汲もうとした時に、井戸に光があった。仰ぎ見ると、麗しい青年がいた。とても不思議に思った。そうして火遠理命はその下女に「水が欲しい」と乞うた。

 下女はただちに水を汲んで、玉のような器に入れて奉った。そうして水を飲まずに首の玉を解いて口に含んでその器に吐き入れた。ここで、その玉は器について、下女は玉を離すことができなかった。そこで玉を着けながら豊玉毘売命に進上した。

 そうして、(豊玉毘売は)その玉を見て、下女に問うて「もしや誰か門の外にいるのですか」と言った。答えて「人がいて、我らの井戸の上の桂の木の上にいます。とても麗しい青年です。我らが王に増してとても貴いのです。そこで、その人が水を乞うたので、水を奉ったところ、水を飲まずにこの玉を吐き入れました。これは離すことができません。そこで入れながら持って来て献上しました」と言った。そうして、豊玉毘売命は不思議に思って出て見て、ただちに(火遠理命の姿を)見て愛でて目配せして、その父に曰く「我らの門に麗しい人がいます」と言った。そうして海の神自ら出て見て曰く「この人は天津日高(あまつひたか)の御子、虚空津日高(そらつひたか:日を仰ぎ見る如く貴い、中空なる神)だ」と言って、ただちに内に連れて入り、アシカの皮の畳を八重(幾重にも)敷いて、また絹の畳を幾重にもその上に敷き、その上で座らせて、数多くの物を載せる台に物を供えて、食事をとらせて(服属して)、ただちにその娘の豊玉毘売と結婚させた。そこで三年に至るまでその国に住んだ。

 ここで火遠理命はその最初の出来事を思って、大いに一度嘆いた(ため息をついた)。そこで豊玉毘売命は火遠理命の嘆きを聞いて父に「三年住んでも、常には嘆くことは無かったのに、今夜は大きくため息を一つつきました。もしかして何か理由があるのでしょうか」と申した。そこで豊玉毘売の父の大神は、その婿に問うて「今朝、我が娘が語ったのを聞いたところ、『三年いましたけれども、常には嘆くことは無かったのに、今夜大きくため息をついた』と言った。もしかして理由があるのか。また、ここに到った理由は」と言った。そうして、その大神にその兄の失せた釣り針を徴発された状況をつぶさに語った。

 これを聞いて、海の神は悉く海の大小の魚を召し集めて問うて「もしかしてこの釣り針を取った魚がいるか」と言った。そこで諸々の魚が「この頃はチヌ(赤海鯽魚:たひ)が『喉に(魚の)骨が刺さって物を食べることができません』と憂えて言いました。そこできっとこれを取りましょう」と申した。ここでチヌの喉を探ったところ、釣り針があった。ただちに取り出して清め洗って火遠理命に献上したときに、その綿津見大神が教えて「この釣り針を持ってそなたの兄に与えるときに言う事は『この釣り針はぼんやりの釣り針、猛り狂う釣り針、貧しい釣り針、役立たずの釣り針』と言って後ろ手で渡せ。そうしてそなたの兄が高地に田を作ったならば、そなたは低地に田を営め。そなたの兄が低地に田を作ったならば、そなたは高地に田を作れ。そうしたら、自分は水を司るので、三年の間、そなたの兄は貧しくなるだろう。もしそなたの兄がそうなる事を恨んで攻め戦うならば塩盈珠(しほみちのたま)を出して溺れさせよ。もしそれが憂えて(許しを)請うならば、塩乾珠(しほひのたま)を出して生かせ。このように悩み苦しめよ」と言って、塩盈珠と塩乾珠を併せて二つ授けて、たちまち悉くワニ(鮫)を召し集め、「今、天津日高の御子、虚空津日高(そらつひたか)が、上の国に出ようとしている。誰か幾日かで送り届けて復命するか」と問うた。そこで、各々身体の長さに応じて日数を申す中で、一尋(ひとひろ)のワニが「自分が一日で送ってただちに還りましょう」と申した。そこでそうしてその一尋ワニに「ならばお前が送り奉れ。もし海の真ん中を渡るときは(火遠理命を)恐れ畏まらせることのないように」と告げて送り出した。そこで、約束通りに一日で送り奉った。そのワニが返ろうとした時に、腰に帯びた紐小刀を解いて、その首に着けて送り返した。そこでその一尋ワニは今では佐比持神(さひもちのかみ)と謂う。

 これを以て、つぶさに海の神の教えた通りにその釣り針を(兄の火照命に)与えた。そこで、それより後は段々いよいよ貧しくなって、更に(先に釣り針を強引に求めた以上に)荒い心を起こして攻めて来た。攻めようとするときには塩盈珠(しほみちのたま)を出して溺れさせた、そして憂えて(許しを)請えば塩乾珠(しほひのたま)を出して救った。このように悩み苦しめさせた時にぬかずいて「自分は今から後、あなたの昼夜の守護人として仕え奉りましょう」と申した。そこで、今に至るまでその溺れた時の種々の仕草を絶えずにお仕えしているのだ。

◆日本書紀
 日本書紀の一部を訳してみる。

 兄の火闌降命(ほのすそりのみこと)は元から海の幸を得、幸、ここでは左知サチと云う。弟の彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)は元から山の幸を得ていた。はじめ、兄弟二人が互いに語らって「試しに易幸(さちがえ)しよう」とおっしゃり、とうとう互いに交換した。各々はその幸を得なかった(獲物を獲ることができなかった)。

(中略)

 時に兄の火闌降命は既に悩まされて、ただちに自ら従って「今から後、私はあなたの俳優(わざおぎ)の民となりましょう。願わくば生かし給え」と申した。

 俳優(わざおぎ)とは滑稽な所作をして神や人を楽しませる人と注にある。日本書紀の方がこの箇所については分かり易い。

◆大宮住吉神楽

 埼玉県坂戸市の大宮住吉神楽では海幸山幸神話は「山幸海幸交易の座」「海神魚寄の座」「海辺産屋の座」として神楽化されている。未見の演目だが、台本があるので紹介する。「海辺産屋の座」は「ウガヤフキアエズの誕生」で取り上げる。

「山幸海幸交易の座」

穂々出見命(弟)、弓矢を持って供奉を連れ登場。神前を拝して座す。
穂須世理命(兄)、釣り竿を持ち供奉を連れ登場。神前を拝して座す。
兄弟は二人で合せ神楽を舞う。
兄弟はそれぞれの持ち物を供奉に渡す。供奉は手渡された持ち物に不備がないか確認する。
兄が向こうの山に悪魔がいるので退治したい。そこで弓矢と釣り竿の交換をして欲しいという。
弟は考えるが、兄には背けず承知する。
兄は弓矢を持って悪魔退治に出かける。供奉も後につづく。
弟は釣り竿があるので釣りをやろうと思い、供奉に魚のいる場所を探せと探させる。
供奉は針にミミズをつける。弟は魚のいる方向に向けて釣り糸を投げ込む。
弟は供奉に釣り竿の番をさせる。糸が引いているので引き上げてみるが魚に逃げられた。
供奉の目にゴミ(ミミズ)が入る。痛い!
供奉、再び釣り針に餌をつける。弟は確認して釣り糸を投げ込む。
大きな魚が掛かった。供奉は魚を追いかけるが、魚は逃げてしまう。
釣り針がない!
弟は釣り針をなくしたことを供奉に口止めする。
供奉は針を探すが見当たらない。
兄は悪魔を退治して勇んで戻り座に着く。
兄は弟に悪魔の頭部をどうだと見せる。弟の供奉はびっくり。
兄は弓矢を弟に返す。そして釣り竿を受け取る。
兄は供奉を連れ帰ろうとするが、兄の供奉が魚がいることに気づく。
それではと兄は釣りをすることにする。
兄は釣り針が無いことに気づく。
兄の供奉は弟が針を盗んだのではと告げる。
兄の供奉、弟の供奉を問い詰める。
兄は弟を座から引きずりだし釣り竿を折って殴る。
兄の供奉も弟の供奉を殴る。
兄と供奉は怒りながら幕に入る。
弟の供奉は弟を助けるが、弟は崩れ落ちる。
弟は供奉に明示で神主(祈祷師)を迎えに行かせる。
神主、登場。
弟は神主を呼び事情を説明する。神主は私にお任せくださいと答える。
神主は神前に行き、幣束でお祓いをし拝する。
供奉、真似をするが、幣束を振った際に頭を叩かれる。
神主は座に戻り祈祷を始める。供奉も神主の真似をする。
{鯱鉾|しゃちほこ}の神が登場。巻物を神主に授けて奥に入る。
供奉は神の登場にびっくりして腰を抜かす。
神主は供奉に巻物を預ける。
供奉は弟に巻物を渡す。巻物には竜宮城への案内図が描かれている。
弟は供奉に神主へのお礼の包みを渡す。
供奉は神主にお礼を渡す。
供奉は包みの中身が気になり後ろから覗く。自分にも分け前をくれと頼む。
神主が断って、供奉は渋々座につく。
神主は弟の神に礼を言って神前を拝し幕に入る。
弟は竜宮城への案内図を持ち神前を拝して幕に入る。
供奉は弟を送り出し一安心。神前を拝して幕に入る。

「海神魚寄の座」

豊国彦命、供奉を連れて登場。神前を拝して座す。供奉、豊国彦に従い神前を拝して座す。
豊国姫命、佐具売に日傘を差しかけてもらい登場、神前を拝し座す。
穂々出見命、登場、神前を拝する。
穂々出見命、正面で辺りを見渡し考えている。道案内の巻物を辿って来たが、この辺だろうか?
佐具売、表に見慣れぬ神がいると豊国彦命に報告する。豊国彦命はこちらに案内するように命じる。
佐具売、穂々出見命を案内する。
穂々出見命、豊国彦命に挨拶をする。
穂々出見命、豊国彦命に針を無くした事情を話す。
豊国彦命、思案してから針探しを引き受ける。
豊国彦命、海(奥)に向かって魚を寄せる。
供奉、寄せた魚(黒魚)を連れてくる。
黒魚を調べると、針はない。
豊国彦命は黒魚を帰す。
豊国彦命、供奉に次の魚を連れてくるように命じる。
供奉、{河童|かっぱ}を連れて登場する。
河童が動き回るので、供奉は河童が動かないように頭の皿の水を拭き取る。
豊国彦命、河童を調べるが針は無い。
河童に帰るように言うが、河童は頭に水がないので動けない。
供奉、河童の頭に勢いよく水を掛ける。
河童、元気が出すぎて供奉の尻に襲いかかる。
佐具売が助けに入り、河童の頭の水を拭き取る。
供奉、今度は少しずつ河童の頭に水をかける。
河童、帰る。
供奉、豊国彦命に奥で喉を腫らして寝ている魚がいると報告する。
豊国彦命、供奉と佐具売に魚を連れてくるように命じる。
供奉と佐具売、赤魚を連れてくる。
佐具売、赤魚の介抱をする。
豊国彦命、赤魚を調べる。針があった。
供奉、赤魚を送り帰す。
豊国彦命、穂々出見命に釣り針を見せる。あなたが取られた釣り針はこれですね?
穂々出見命、その釣り針ですと答える。
豊国彦命、釣り針を穂々出見命に渡す。
豊国彦命、穂々出見命と豊国姫命に契りの神楽を舞うよう命じる。
穂々出見命と豊国姫命は契りの神楽を舞う。
豊国彦命、供奉と佐具売に二人で三三九度の準備をするよう命じる。
供奉と佐具売、道具を持ってくる。
佐具売、三三九度の道具をきれいに拭くと顔が映り、鏡代わりにする。
供奉が可愛いねと佐具売の仕草を覗く。佐具売、恥ずかしがる。
佐具売、三三九度のお酌をする。三三九度の儀式。
豊国彦命、佐具売と供奉に寝屋の準備をするよう命じる。
豊国彦命、穂々出見命と豊国姫命に寝屋で休むように命じる。
穂々出見命と豊国姫命は供に寝屋に入る。
豊国彦命、幕に入る。
佐具売、供奉に残った酒を飲もうと誘う。
佐具売と供奉の酒宴が始まる。
豊国彦命、玉手箱を持って登場。
佐具売、穂々出見命と豊国姫命を呼び起こす。
穂々出見命と豊国姫命、寝屋から出て座す。
豊国姫命が豊国彦命に穂々出見命が嘆いていると報告する。
豊国彦命、何を嘆いているのか尋ねる。
穂々出見命、故郷を思って嘆いていると答える。
豊国彦命、穂々出見命に故郷へ帰るよう促す。土産に塩満玉と塩乾玉と玉手箱を渡す。兄の穂須世理命が怒ってきたら塩満玉を出して苦しめよ。
豊国彦命、お土産を渡し、穂々出見命に挨拶をして幕に入る。
穂々出見命、豊国姫命に自分は故郷へ帰ると別れを告げると、豊国姫命は身持ちになったと告げる。
穂々出見命はでは改めてここに来ると告げて幕に入る。
豊国姫命、佐具売に帰ると伝えて従えて幕に入る。佐具売、豊国姫命を傘を差し掛けて従い幕に入る。
供奉、幕に入る。

 ……大宮住吉神楽では山幸彦が塩満玉で海幸彦を懲らしめる場面は神楽化されていない。

◆余談
 火遠理命の父のニニギ命は山を司る大山祇神の娘コノハナサクヤヒメと結婚して子供を残した。子の火遠理命は海を司る綿津見大神の娘豊玉姫と結婚して子孫を残した。山と海の支配権を得ることで、皇室の権威権力は盤石のものとなったのである。

 火遠理命の子で神武天皇の父であるウガヤフキアエズ命は母の豊玉姫の妹である玉依毘売(たまよりびめ)と結婚するのである。叔母と甥の結婚である。もしかしたら玉依毘売と豊玉姫とは腹違いの姉妹であるかもしれない。そうすると歳が離れていても不自然ではないのだが、それにしても姉さん女房である。

 海幸山幸の神話は子供の頃から親しんだものであるが、単独で絵本化されてもいる。

 古事記の神代篇の最後の部分にあたる神話だが、なぜかこの海幸山幸の神話の部分だけ原始的というか文明が後退しているかのような印象がある。元々古くからあった説話が神話に取り込まれたものだろうか。

 塩満玉はもしかしたら南海トラフ地震のメタファーかもしれない。海沿いに暮らす海幸が津波の被害で弱体化してしまうことが語られているのかもしれない。

◆参考文献
・「古事記 新編日本古典文学全集1」(山口佳紀, 神野志隆光/校注・訳, 小学館, 1997)
・「日本書紀1 新編日本古典文学全集2」(小島憲之, 直木孝次郎, 西宮一民, 蔵中進, 毛利正守/校注・訳, 小学館, 1994)
・「古事記講義」(三浦佑之, 文藝春秋, 2007)

記事を転載→「広小路

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