案外、近代の産物――ホブズボウム「創られた伝統」
ちなみに、岩竹美加子「民俗学の政治性―アメリカ民俗学100年目の省察から」によると(26P)ホブズボウム「創られた伝統」は構築主義に大きな影響を与えた本だが、その前段としてイギリスのマルクス主義学者ウィリアムスの歴史や伝統の意味を問い直す研究があり、そこから「創られた伝統」等の著作につながったとされる。東西冷戦が終わり、唯物史観は力を失ったと考えていたが、思わぬところで猛威を振るっていた。
・「創られた伝統」(エリック・ホブズボウム, テレンス・レンジャー/編, 前川啓治, 梶原景昭 他/訳, 紀伊国屋書店, 1992)
・「民俗学の政治性―アメリカ民俗学100年目の省察から ニュー・フォークロア双書27」(岩竹美加子/訳, 未来社, 1996) 26P
<追記>
ChatGPTにホブズボウムについて質問してみる。以下のような回答だった。
>ホブズボウムは、英国王室の儀式が近代になって創られたものであると主張していましたが、これについては諸説あります。一方で、英国王室の儀式は、歴史的に重要な起源を持ち、中世やルネサンス期の王宮文化にも影響を受けています。
>たとえば、英国王室の戴冠式における王冠の使用は、紀元前の古代エジプト文明にまで遡ります。また、戴冠式の儀式や誓いの言葉は、中世ヨーロッパの王宮での儀式から発展したものであるとされています。
>さらに、王室の儀式や所作には、国家的威信や権威を表現するための象徴的意味が込められていることもあります。そのため、英国王室の儀式が近代になって変化したとしても、そこには先行する時代の文化や慣習の影響が残っていることが考えられます。
>総じて、英国王室の儀式や所作には、中世やルネサンス期の王宮文化からの影響があり、それらが近代に継承されていると考えることができます。
……としている。ChatGPTのネタ元はネットに転がっている知識も含まれるだろう。ホブズボウムの言説に懐疑的な見方もあるようだ。
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