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2018年5月28日 (月)

中世で存在感を増す神々――山本ひろ子「中世神話」

山本ひろ子「中世神話」(岩波新書)を読む。伊勢神道の文献を主な題材として古代の神話観から中世の神話観への変容を描いている。天御中主神と豊受大神について詳述されているのは良かった。天御中主神は古事記だと世界の始原に現れて、そのまま姿を隠してしまう。ちょっとだけしか登場しないのだ。

中世の両部神道では梵天王と習合され、その立ち位置が強化される。豊受大神は記紀神話では類似の神は登場するものの、豊受大神としての登場はない。その豊受大神が天御中主命と接近することで、皇祖である天照大神との関係を変化させていく。御饌(みけ)の神であった豊受大神が天照大神と対等な地位にまで格を上げるのである。

天の瓊矛やニニギ命に関する論考もある。両者とも中世神話では、そのイメージを変えている。天の瓊矛は天地創世にまつわる呪具、中世では天の逆鉾に姿を変える。ニニギ命は記紀神話では降臨した幼童というイメージだったのが、中世神話では自ら葦原中つ国を平定するそれに変わっている。

中世神話というと、中世出雲神話などもそうである。当ブログの記事だと、胸鉏比売の伝説などは中世神話に由来するものと言えるだろう。

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