黎明期の本――本田安次「日本の伝統芸能 第二巻 神楽Ⅱ」
本田安次「日本の伝統芸能 第二巻 神楽Ⅱ」を読み終える。550ページ近くある大著で、後半200ページほどが資料集だった。旧字体の知らない字も多く、手元に漢和辞典がないので、IMEの手書き入力機能を利用して調べたが、一度では中々覚えられない。資料集を読むのは骨が折れた。
全国の神楽を概観した本で、ただし悉皆調査ではないので、例えば広島の十二神祇神楽は漏れている、そういう意味では西日本に偏っていた自分にとっては有難いのだが、第一章の湯立神楽は予備知識がほとんど無いこともあってか、頭に入らなかった。それ以降、執物神楽、山伏神楽・番楽、大神楽、巫女神楽に関しては読めた。
神楽研究が始まって間もない時期からの論考を収めたもので、記述は子細であるが、ある意味、神楽の実見と史料の収集が主の段階である。出雲流神楽ということが言われるが、例えば関東の里神楽と比較して直感で出雲流ということが言われるのであって、史料や口伝に基づくものではない。
石見神楽の場合、出雲神楽と被っている演目があって、影響を受けていることが分かるのだが、古い通説が関東の里神楽も出雲流神楽としてしまうことには疑問がある(※本著では執物神楽と分類している)。
ちなみに付録として、岩田勝「伝統芸能研究における文書資料の活用」、朝山芳国「佐陀神社の御座替祭」などが収録されている。
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