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2017年9月28日 (木)

ユングの元型の概念で昔話を分析――河合隼雄「昔話の深層」

河合隼雄「昔話の深層 ユング心理学とグリム童話」を読む。ユングの心理学に基づいてグリム童話を解釈したもの。ユングの提唱した元型(アーキタイプ)という概念に基づいて童話を分析するのである。

グレートマザー(太母)や影(シャドウ)、トリックスター、アニマ、アニムスなどといった概念に基づいてグリム童話の様々なお話が解釈されていく。童話と元型の概念は相性が良いようで、日本人が日本語で書いた本ということもあって分かり易い。

グレートマザーとは全てを包み込むような母性であるが、反面、全てを呑み込んでしまうような恐ろしい一面も見せる。影(シャドウ)はもう一人の自分。トリックスターは神話や昔話に登場するいたずら者。アニマとは男性が自分の内に持つ理想の女性像。恋をするということは、自分のアニマを相手に投影するということでもある。アニムスは女性の中にある理想の男性像。女性にとってアニムスは父性像という形で現れる。全てを包み込むグレートマザーとは正反対に、父性は全てを分割、処断していく厳しい一面を持っている。

巻末には実際に分析に用いられた昔話が収録されている。グリム童話は子供の頃に読んだきりで、大人になってから目を通したことはなかった。子供向けにマイルドにされたお話ばかりではないとのことで、例えば「トルーデさん」といった怖い結末の作品も収録されている。「トルーデさん」については夢オチに改変すればいいのではないかと思うが。

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