「古事記講義」を読み終える
三浦佑之「古事記講義」(文藝春秋, 2007)を読み終える。「口語訳 古事記」とセットになった本と考えればよいか。文庫版は2007年刊行なので10年近く積読になっていたことになる。 専門の学者さんが一般向けに書いた本なので、素人の自分でも読めた。古事記だと天照大神と須佐之男命の間で行われた誓約(ウケイ)で生まれた三柱の女神と五柱の男神を取り換える話はその意図するところが判然としないのだけど、日本書紀と比較することで、古事記の持つ意味合いが分かり易いものになっていた。 第四章では「出雲神話と出雲世界」と題した講義で、出雲神話についてページを割いて詳述している。日本書紀には出雲神話はあまり語られていない(国譲り神話などは語られていない)のだけど、日本書紀、出雲国風土記と比較しつつ、出雲神話の持つ役割について詳述されていた。 律令制国家の成り立ちを語る歴史としては出雲神話の神統譜は不要だったが、古事記では国史的な枠組みに収まりきらない神話も取り込まれているのが特徴だろうか。日本書紀よりも文学性が強い。 紙数の関係か、関心が薄いのか分からないが、残念ながら神武東征神話については触れられていない。物部氏が服属するまでの物語と考えればよいのだろうか、単なる神話とするには記述が具体的で何がしかの真実が込められていると思うのだけど。 著者の三浦佑之氏は千葉大学教授を経て立正大学に籍を移された。今年定年退官とのこと。
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