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2017年1月15日 (日)

国造りの仮住まい――志都の岩屋

大汝少彦名のいましけむ 志都の石屋は 幾代経ぬらむ
 万葉集に「志都乃石室」と詠まれたとされる場所が島根県には二か所存在する。大田市静間町の静之窟と邑南町にある志都岩屋神社である。

◆志都岩屋神社

 邑南町の志都岩屋神社の本殿裏には鏡岩と呼ばれる巨岩があり、古くからの巨石信仰が窺われる。
邑智郡邑南町の志都岩屋神社・鳥居
志都岩屋神社・拝殿
志都岩屋神社・本殿と巨岩
志都岩屋神社・ご由緒
志都岩屋神社・萬葉歌副碑
 2018年に志都岩屋神社の裏山を登った。体力不足で古志都岩屋までしか行けなかった。次回はもっと上まで行ってみたい。
邑南郡邑南町・古志都岩屋
古志都岩屋

◆静之窟

 大田市静間町の静之窟は海岸にできた岩窟(海食洞)。以前は人が入ることができたようだが、現在は崩落の危険ありということで立ち入りは禁止されている。
大田市静間町の静之窟
静之窟・石碑
静之窟と鳥居

◆静間神社

 大田市静間町にある静間神社は静之窟との所縁が深いようだ。
大田市静間町の静間神社・拝殿
静間神社・拝殿と本殿
静間神社・ご由緒
 静間神社は、第五十八代光孝天皇の御代、仁和二年(八八六年)二月八日に創建されました。昔は魚津の静ノ窟に鎮座していましたが、明暦二年魚津■(?)の前に遷座し、さらに延宝二年(一六七四年)六月二十七日、現在地に遷し祀られました。
 大己貴命、少彦名命の二柱の神は、農民に鋤、鍬を与え、水稲の種子をまいて、田作りの方法を教えられました。また、人間の病気はもとより、家畜の病気治療にも当たられた神々として、今の世でも日本各地で、病める人たちの深い信仰を集めています。
 とご由緒にある。元は静之窟に鎮座していたが、後に現在地に遷座したとのこと。
 大国主命と少彦名命が「志都乃石室」を国造りを行なうための仮住まいとされたというが、考えるに、大田市静間の方が出雲に近くそれらしいか。

◆よいところも悪いところも

 むかし、オオアナムチ命がスクナヒコナ命に話しかけた。
「われわれのつくった国は、良くできたと言っていいだろうか」
「うまくいったところも――スクナヒコナ命が答えた――あれば、うまくいかなかったところもある」
 この話には、どうやらふかい趣があるらしい。その後、スクナヒコナ命は[出雲の]熊野の[山]崎に行き、とうとう常世郷(とこよのくに)にまっすぐに行った。またはいう、淡島に行って、粟の茎によじのぼったら、はじかれて常世郷に行ってしまった、と。
「<原本現代訳>日本書紀(上)」58P
 国造りには上手くいったところと上手くいかなかったところがある。この文章を読んで、昔、竹下元首相が過去の植民地支配に関して「良いことも悪いこともあった」と述べて物議を醸したことを思い出した。竹下首相は上記の言い伝えを念頭に置いていたのかもしれない。
 戦前の日本人は威張っていたらしいが、別に苛烈な支配をした訳ではない。日本の領土だったところは韓国にしても台湾にしても旧満州にしても栄えている。国民皆教育が大きかったのだろう。

◆余談

 邑南町の志都岩屋神社の裏山である弥山は登山コースになっているが、訪問当時、酷い足首捻挫で登るのをあきらめた。
邑南町の志都岩屋神社・弥山の登山コース
 大田市静間町の静之窟に行こうとしたのだが、静之窟周辺には駐車場が無く、近所の住宅の人に「ここは駐車場がありません」と怒られた。次回行くときはどうしよう。
<追記>
 大田市静間町の静之窟だが、坂はきついが静間神社から歩いていける距離だった。静間神社前に車を停めていった。
 邑南町の志都岩屋神社は、浜田道・大朝ICから国道261号線を旧瑞穂町方面に向かって走る。県道6号線に入る。そこから更に右折する(※6号線を進む)。神社前に鳥居と看板があるので、鳥居をくぐる。しばらく進むと神社の方向を示した杭がある。民家があり狭いが、そこを上がると駐車スペースがある。
 静間神社は国道9号線から静間方面へ入る道、県道287号線に入って、静間小学校方面へと曲がる。そのまま道なりに進むと、「静間神社」と書かれた標識があるので、そちらに曲がる。しばらく進むと静間神社がある。神社前に車を停めるスペースがある。神社から道を下ると静之窟(しずのいわや)へ行ける。歩いていける距離(※岩屋周辺には駐車スペースがない)

◆参考文献

・「日本の神々―神社と聖地 第七巻 山陰」(谷川健一/編, 白水社, 1985)pp.169-170
・「<原本現代訳>日本書紀(上)」(山田宗睦/訳, ニュートンプレス, 1992)
記事を転載 →「広小路

 

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