太宰治「葉桜と魔笛」の城下町はどこ?
太宰治の短編「葉桜と魔笛」
姉である主人公(語り部)の妹は腎結核を患い余命いくばくもない。そんな妹の文通相手の手紙を読んでしまうことで物語が始まるのだけど、この作品、舞台が島根なのである。
父は、私十八、妹十六のときに島根県の日本海に沿った人口二万余りの或るお城下まちに、中学校長として赴任して来て、恰好の借家もなかったので、町はずれの、もうすぐ山に近いところに一つ離れてぽつんと建って在るお寺の、離れ座敷、二部屋拝借して、そこに、ずっと、六年目に松江の中学校に転任になるまで、住んでいました。
島根県の城下町というと松江と浜田と津和野だろうか。松江には言及されているので松江ではない。
あとで知ったことでございますが、あの恐しい不思議な物音は、日本海大海戦、軍艦の大砲の音だったのでございます。
あの海岸の城下まちにも、大砲の音が、おどろおどろ聞えて来て、まちの人たちも、生きたそらが無かったのでございましょうが、
日本海海戦の砲撃音が聞こえたとあるので、津和野ではない。すると浜田だろうか。浜田なら聞こえたはずだ。「日本海に沿った」「海岸の城下まち」だし。ただ、当時の浜田が人口二万人程度だったのか不明。
作品の舞台が島根のどこであろうと、この作品の本質とは関係ないのだけど、魅力的な短編でもあり、舞台が具体的にどこと想定されるのか探りたくなる。
『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(光文社・松本侑子著)が新田次郎文学賞を受賞!!
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因みに太宰の妻石原美知子は、石原初太郎・くらの四女として島根県那賀郡浜田町(現在の浜田市)で生まれている。父の初太郎は山梨県出身の地質学者で、当時島根県の中学校で校長を務めていた。短編『葉桜と魔笛』は島根を舞台に書かれている。美知子は良妻賢母型の女性として太宰を支えた。
とある。なので浜田がモデルというところだろうか。地元の人なら日本海海戦の砲撃音を聞いていただろうし、それを太宰に伝えていたとしても不思議ではない。
この作品は「能登麻美子おはなしNOTE」という文化放送のネットラジオで朗読されたことがきっかけで知った。太宰の作品に触れるのは高校生以来。面白いとは分かっているのだけど、中々手がでなかった。今はこうして青空文庫で読むこともできる。便利な時代だ。
ちなみに、東京都の「教育研究心研究報告書・国語」(高等学校・平成10年度)という資料には
教材の「葉桜と魔笛」はよく知られた作家の手になる短編小説であり、読書量の少ない生徒でも関心をもちやすいと考えた。(12P)
とある。読書量のめっきり減った自分には耳が痛い。
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