竹島のニホンアシカ(標本)
島根海洋館アクアスに展示されていたニホンアシカの標本(剥製)です。成獣と幼獣の二頭。明治時代以降、乱獲によって大きく数を減らし、現在では絶滅したとされています。標本は県内の高校に保管されていたもので、竹島に生息していた個体ではないかと思います。竹島はニホンアシカの一大繁殖地だったそうです。
ニホンアシカ
Zalophus californianaus japonicus
数十年前まで、日本にはアシカのなかまがくらしていました。ニホンアシカは、本州・四国・九州の近海にすみ、特に日本海に多く見られたようです。
ニホンアシカは、明治の終わり頃から脂と皮をとるために、漁師によって捕獲されていました。1950年頃には島根県の竹島に200~500頭が生息していましたが、乱獲によって次第に数を減らしていきました。
そして、生息地が破壊されたことも影響して、今では見ることができなくなってしまいました。
※アクアスの解説より。
成獣の標本。浜田高校に保管されていたとのこと。
この標本は県立浜田高校に保管されていたものです。捕獲時期や場所は不明ですが、すでに昭和初期には保管されていたようです。成獣メスの標本は数が少なく貴重なものです。
幼獣の標本。大社高校に保管されていたもの。
この標本は、県立大社高校に保管されていたものです。明治38年、当時の島根県知事が竹島を視察した際、幼獣3頭を持ちかえり、県庁の池で飼育していたうちの一頭と考えられています。
※異なる時期に捕獲されたものらしく、親子ではないようです。
※写真は2011年夏に撮影したものです。アクアスでの展示は常設でないかもしれません(未確認)。
◆江戸時代の地誌
手元に資料が無くうろ覚えですが、「石見外記」という江戸時代の地誌に浜田市の瀬戸ヶ島でアシカを目撃することがあったと記述されていました。
浜田市真光町の観音寺。写真左側の鎮守堂はアシカの食害に悩んだことから勧請したものだそうです。
◆リャンコ大王
ニホンアシカの標本ではリャンコ大王と呼ばれた巨大な雄のものが知られているそうです。『鷹の爪』にも登場するのだとか。実際に見てはいないのですが、逸話を読むと、アシカの食害に漁師たちが悩まされていたことがうかがえました。
三瓶自然館サヒメルに展示されているリャンコ大王を実際に見学しました。雌より何回りか大きな巨体です。
◆参考文献
・「江戸後期諸国産物帳集成 第11巻(因幡・石見・備前・備後・安芸)」(安田健/編, 科学書院, 2001/06)
・児島俊平「龍神さんと石見漁民 ―文化年代の異常海象について―」雑誌「郷土石見」第11号(石見郷土研究懇話会/編, 1981)pp.23-33
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