降りてきんさい、戻りんさい――葬式の使い
◆石見の民話
◆葬式の使い
・状況設定:猟の好きな六兵衛という男。女房が殺生を止めるよう言うが、六兵衛は聞く耳を持たない。
・導入部:女房といさかいをし、鉄砲を担いで山へ行く。さっぱり獲物が捕れない。道が分からなくなり日が暮れてしまう。
・山で一夜を明かす。何が出るかわからないので木の上へあがって寝る。
・夜中になって人の足音が。木の根元へ来て「六兵衛さん、六兵衛さん」と呼ぶ。六兵衛は化け物に違いないと思って黙っている。
・声。六兵衛の女房の具合が悪く、帰って診てあげないといけないと言う。六兵衛は黙ったまま。
・声。木にしがみついていないで早く戻れ。そこに居ることは分かる。六兵衛は黙ったまま。
・声。これほど言っても戻らないなら死んでも知らない。声の主、去る。
・六兵衛、変なことだと思っていると、提灯の火が見え、また誰かがやってくる。声。もたないかもしれない。戻らないと後悔するようになる。早く戻れ。六兵衛は相変わらず黙っている。声の主、ぶつぶつ文句を言って去る。
・しばらくするとまた提灯の火が見える。声。女房はとうとう死んだ。葬式のこともあるから帰れ。六兵衛、黙ったまま。声の主、去る。
・今度は提灯の火がぞろぞろ大勢やってくる。何かを担いでいる。大きな棺。声。いくら言っても六兵衛が帰らないから女房は死んだ。死人を一人置く訳にいかない。棺をこしらえここまで来た。好きなようにしろ。
・六兵衛、棺がそんなに早くできる訳がないと動かずにいる。と、棺が裂けて女房が出てくる。
・女房、あんなに言っても帰ってくれぬから死んでしまったと木に登ってくる。
・女房の手が足まで届き、六兵衛は鉄砲で撃つ。女房、下へ落ちる。
・結末:夜が明ける。下りてみると血の跡が。跡を辿ると六兵衛の家へ続いており、女房が銃で撃たれ死んでいた。六兵衛、仏の見せしめだと猟を止める。
という流れ。本当は石見弁の巧みな語り口で六兵衛を誘うのだが、未来社の本に収録されているとのことなので、そちらをご参照あれ。
◆バッドエンド
サウンドノベル形式にしたら、ほとんどの人が初回プレイではバッドエンドとなるのではないか。というより、どうしたらハッピーエンドになるのか。
暗い話ばかりを好んでいる訳でもないのだけど、こういう話に出会うのが醍醐味だとも感じた。
◆まんが日本昔ばなし
◆余談
「石見の民話」では採集した語り口をそのまま活かすスタンスで、再話する際に脚色することは極力控えたようだ。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.166-170.
記事の転載先 →「広小路」
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