だらじむこ 漬物と風呂
もう一つ、“だらじむこ”。出雲の昔話。
とんとん昔。あるところに、“だらじ”な婿がおったそうな。
飯を食った後で、嫁さんがお茶をついでくれたけれど、熱いの何の。
「やれ、熱いことだ。飲めんがな」
と、ふうふう吹いたそうな。
それを見た嫁さんは、
「まあまあ、お前さん。そんなにふうふう言うものじゃありません。みっともない。熱いときは漬物で茶碗の湯を混ぜれば冷めるものです」
と教えたそうな。
嫁さんの家に婿入りしたある日、
「風呂が沸いたから、お入りなさいな」
と言われて風呂場へ行ったそうな。
蓋をとって開けて手をつけたら熱いの何の。
「やれ、熱い熱い。おい、嫁さん、漬物だ、漬物だ」
と漬物をとってもらい、それで風呂桶をまぜたそうな。
だけど中々ぬるくならなかったそうな。それでこっぽし。
…という内容。「島根のむかし話」島根県小・中学校国語教育研究会/編著者 , 日本標準, 1976)。
出雲弁を標準語風に直した。
東北地方辺りだとお茶請けに漬物がよく出るそうだが、漬物で湯を冷ましたりするのだろうか?
「日本昔話通観 第18巻 島根」では、モチーフ構成として「言葉どおりに従うこと」「行為について教えられたことをその言葉のとおりにする」としている。(490P)
◆余談
近所の家に昔風の風呂釜があった。下は鉄製で熱いので丸い木製の板を敷いて風呂桶に入る。湯が冷めにくいのがメリット。
◆参考文献
・「島根のむかし話」(島根県小・中学校国語教育研究会/編著者 , 日本標準, 1976)pp.147-148
・「日本昔話通観 第18巻 島根」(稲田浩二, 小沢俊夫/編, 同朋舎, 1978)pp.486-490
記事の転載先 →「広小路」
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