カッパの怖い手紙
ある男が川端を歩いていた。すると道端に婆さんが立っていた。
ネットで別の民話を読んだが、隠岐のカッパは怖い話が多いのかもしれない。
◆大田市の河童伝説
「日本伝説大系 第十一巻 山陰(鳥取・島根)」(野村純一他, みずうみ書房, 1984)に「ハロー!この町」で紹介された河童の伝説が収録されていた。帰る姿をこっそり盗み見たところ、それから来なくなったというあっさりした結末であった(212P)。
◆浜田市の河童伝説

◆えんこうの石
宇津井の庄屋である河上仁右衛門は今から三百三十年(二〇二〇年代では三百七十年前)に宇津井を開拓した人として知られている。自分の財産をなげうって工事を初め、自分も毎日百姓たちの先頭に立って山を崩したり土を運んだりした。
ある夏の暑い日のこと、仁右衛門がいつものように仕事を終えて、馬に乗って帰ろうとしたが、川岸に繋いでいた馬がいない。
誰かが連れて帰ったのだろうと、気にも留めずに歩いて家に帰ってみると、馬は馬屋の中に入っていた。ところが戸は開いたままだ。
誰か知らないが不用心な奴じゃのうと思って馬屋へ近づいた仁右衛門だが、かいば桶の中に奇妙なものを見つけた。何やら黒いものがゴソゴソ動いている。見ると手綱でぐるぐる巻きになったえんこう(河童)だった。
さては馬に悪戯しようとして手綱が絡まってしまったな。それで馬に引きずられてここまで連れてこられたという訳かと納得した仁右衛門が頭の皿の水が乾いてぐったりしているえんこうをつまみ上げ、散々にぶちのめして放してやった。
それきり、えんこうの事は忘れていたが、それからしばらく経って仁右衛門は病気になった。ところが、病気になってからというもの、夜になると、外から「仁右衛門、仁右衛門」と呼ぶ声がする。何事かと枕元の刀を手にとって縁側へ出てみると誰もいない。
そんなことが週五日続いたある日のこと、また呼ぶ声がするので、その日は刀を持たずに縁側に出た。すると木の陰に何やら動くものがいる。
怪しい奴と仁右衛門は庭に降りて黒い影に近づいた。黒い影はすっと逃げた。つられる様に仁右衛門はふらふらと跡を追っていった。激しい水の音がして、はっと我に返った仁右衛門だった。いつの間にかえんこうの棲む川淵まで来ていた。
えんこうの仕返しだと思った仁右衛門が辺りを見回すと、橋の傍らの柳の木陰にこの間のえんこうが歯をむき出しにしてこちらを見ていた。
今度こそ二度と悪さをできんようにしてやると仁右衛門はえんこうに飛びかかった。だが、皿の水がたっぷりあるのか、河童の力は強かった。病み上がりの力では中々ねじ伏せられない。
取っ組み合いが続いて皿の水が少なくなってきたえんこうは段々と弱くなっていった。仁右衛門はえんこうを掴んで持ち上げると柳の木の側の石に叩きつけた。えんこうは起き上がることもできなかった。
毎晩の様に声をかけておきながら、なぜ今日に限って姿を見せたのかと仁右衛門が訊くと、えんこうは自分は{金気|かなけ}が苦手なのだ。今日は仁右衛門が刀を持って出なかったから誘いだした。どうか命だけは助けて欲しいと答えた。
そこで仁右衛門は二度と子供や馬に悪戯するなと言って、ようやく許した。
仁右衛門がえんこうを打ちつけた石は今も「えんこうの石」と言われて河上家の靴脱ぎ石に使われている。えんこうの皿が当たったからか、石の角は欠けたままである。
◆東北でのバリエーション◆アニメ
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇 第一集第二集』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.268-270.
記事を転載 →「広小路」(※一部改変あり)
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