雲と蜘蛛――山城にまつわる伝説
◆山城の伝説
島根県邑智郡邑南町(旧石見町)にある雲井山。標高430メートルほど。山城があったという伝説がある。
戦国の世の話。井原(いはら)に雲井(くもい)城という山城があった。山が急で攻めにくく、その上、雲と蜘蛛(くも)が出てどこに城があるやら道があるやら迷ってしまう。また、蜘蛛は粘り強い糸で敵兵の身体を巻いてしまう。その隙に城中の兵が斬りこんでくるので、どうしても城は落ちなかった。
雲井城の下を流れている川は大事な飲み水であった。ところが、水を汲みに降りる娘が時々消えることがある。これはこの山の蜘蛛が娘をさらっていくからだった。これには城中の兵も村人たちも困ってしまった。
蜘蛛を退治しようと若者が言った。老人は蜘蛛と雲には深い関わりがあると制止した。が、若者はそれを聴かずに蜘蛛を皆殺してしまった。
果たして敵が攻めてきたとき、雲は湧いてこなかった。寄せ手の兵はこのときばかりと攻め寄せたので城はとうとう落ちてしまった。
http://iwami.web.fc2.com/ibara.htm
石見町の要衝地で山頂に遺構が残されているそうだが、登山道は整備されていないとのこと。蜘蛛の伝説も紹介されている。地図上に記されていないのは山頂まで登る道がないからなのだろう。
夏にドライブしたとき、その山とは知らずに通り過ぎていた。地図で確認すると、邑南町にはいくつか山城跡が記されているが雲井山にはない。
記憶では蜘蛛が吐いたのは霧だと思っていた。読み返すと、雲を吐いたと記されている。蜘蛛と雲を引っ掛けた伝説でもある。夏にドライブしたときは雨だった。雲井山ではなく火室山(標高652メートル)もしくは冠山(標高859メートル)だと思うが、ちょうど山頂あたりに雲が掛かっているのを見た。蜘蛛が吐いたのが霧やもやではなく雲としたのはそうしたイメージからかもしれない。
◆類話
◆蜘蛛淵伝説
日本標準『島根の伝説』に「千八尋渕(せんやひろぶち)と長九郎(ちょうくろう)」というタイトルで類話が収録されている。これは詳細な話が未来社『石見の民話』第二集にも「千八尋渕」のタイトルで収録されている。
◆アニメ
◆蟹が迫城の竜――江津市渡津町
◆余談
学生だった頃、はじめて上京して一月か二月が過ぎた。快晴の日が続いて、日本晴れとはこういうことかと実感した。無論山陰でも快晴の日はあるけど、関東に比べればやはり天気の変わりやすさはあると思う。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.366-368.
・邑智郷の言葉
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