細野不二彦「さすがの猿飛」。80年代に少年サンデー系列の雑誌で連載されていた。存在を知ったのはアニメ化がきっかけだった。
昨年の夏に帰省した際、久しぶりに読み返したが、非常にバランスのとれた優れた作品だと再認識した。主人公の肉丸とヒロインの魔子を中心にお色気たっぷり、ドタバタの学園コメディが展開していく。
忍者を養成する高校が舞台。姉御タイプの少女(魔子の友人)、肉丸に翻弄される生徒会長、生真面目な後輩、肉丸の家族、忍豚(にんとん)とその主の少年など徐々にキャラが増えて賑やかになっていく。
肉丸が未熟な少年だった時代、彼に苦手意識を植えつけた年上の少年(彼はとある事情で高校を中退した)の登場で作品が転調する。
その後、魔子の母の登場を経て最終エピソードに突入する。魔子の母は若い頃、肉丸の父に密かに恋をしていたが、肉丸の母に破れるかたちとなってしこりを残している。そのため、猿飛家出身の肉丸を愛娘の魔子から遠ざけようと図る。
美少女の魔子がなぜ肉丸にぞっこんなのか、その理由となったエピソードもある。要するにツンデレである。
魔子の母の計略で二人は引き離されることになる(文句のつけようのない完璧な罠)が、結局その話はお流れになってしまう。このとき魔子は忍者として肉丸に置いていかれる、ついて行けないのではないかと疑念を抱きはじめる。魔子自身も有能なくの一だが、肉丸は遥かその先を行っているのだ。
ここで最終エピソードに突入、魔子はその名の通り魔性の子であることが明かされ、敵側についた魔子と肉丸の最終決戦が行なわれる……というストーリー展開。
実際はお色気要素満載で堅苦しい話ではない。しかし、最終エピソードの魔子の心情描写は秀逸で、アニメ化された際は最終エピソードまではやっていないので、ちょっともったいない気がしている。舞台を現代にすれば、今でも十分に通用するのでないかと思うが、パンチラやらお色気シーンがそのまま放送できるか否か分からない。
当時を振り返ると、美少女が一途に自分を慕ってくれる……という構図が羨ましかったように記憶している。正直、漫画に逃避している自分がかなり情けなかった。暗い青春でした。なのだけど、実は美少女や美女、可愛い娘に意外と遭遇したりしてもいる人生ではある。但し、悉くものにできなかったが…… (^^;
学園忍者もので斬新というより完成度の高さが特徴的な作品である。ちょっと昔の少年漫画の良作としてお薦めしたい。