電子ペーパー付
紺野キタ「ひみつの階段」Kindle版を読む。巻末に書籍版にはなかったペーパーが付けられている。これの為に購入したようなものである。
<追記>
twitterによると、「li'l flowers」シリーズは2作で終了とのことで、激しく脱力。なので、以下に書いたことが全くの見当外れとなってしまった。スミマセン。
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comicスピカに掲載された紺野キタ「li'l flowers」「Tiny Tiny Girl」を読む。読んだのは「Tiny Tiny Girl」が先で「li'l flowers」が後。
主なキャラクターとして秋吉朔、宇野麻子、佐藤さん、池さんの四名が挙げられる(他、名ありキャラは石井さん)。「li'l flowers」「Tiny Tiny Girl」の双方に登場しているのは朔だけ。朔は少し離れた位置で俯瞰する立ち位置になるのかもしれない。四人の中だと、うさこ(宇野麻子)が感情の振れ幅が大きく表情が豊かで一番魅力的に見える。
ふと、麻子は末っ子ではないかと思い浮かぶ(そう解釈すると無理がないという程度)。「お姉ちゃん達」というセリフがある。学園では独りらしいので年の離れた姉妹ではないか。性格的にも周囲から愛されて育ったことが窺える。「お姉ちゃん達」も祥華のOGではないか。
そんなことを考えたのは要するに自分自身が年の離れた末っ子だったから。長男、長女と末子に挟まれた次男、次女は親にかまってもらえないから自発的な性格の人が多いという。末っ子は対称的に受け身がちになる。
未だに痛感するのだけど、末っ子気質が抜けない。受け身がちで一番下のポジションが居心地良いのだ。後輩たちにどう接したものか戸惑うこともあった。
麻子が末っ子と決まった訳ではないけど、「li'l flowers」シリーズが続いていくなら、彼女が末っ子的ポジションになるのではなかろうか。というか、一度きりで終わらせるには惜しいキャラだ。
何で推すかというと、もう一つ、僕の出身地(の隣の市)に末っ子が大切なものを継承する伝説があるから。幼いがため思い通りにはいかないけれど、周囲の助力も得て苦難を乗り越え成長する。物語の中で末子が大きな役割を果たすパターン。現実世界では長子相続が主流だけど、そういう話(末子相続)になっているのは、そうすることでお話の筋として無理なく受け入れることができるからだろう。
「お姉ちゃん達」は宇野家の姉たちでもあり、もっと広げると、夏・鞠絵・竹井・三島たちのことでもあると拡大解釈もできるはず(穿ちすぎかもしれないけれど)。「お姉ちゃん達」から送られた人形の数々、あれは「ひみつの階段」のキャラたちからバトンタッチされた証と解釈することも可能だろう。
奇しくも初回で既にそういう立ち位置の娘が登場している。だから、麻子を軸に据えるのが一番いいのではないか……という気がする(※メタ視点で)。
それはともかく「つづきはまた明日」の里佳子さん似で、勝手に動きだすキャラに成長するだろう。ギスギスした雰囲気を上手く中和してしまう存在になるのではないか。
余談。
麻子の「麻」は大麻の麻でもある。僕の出身地に大麻山というそのものズバリの名の山がある。本来は「オオマヤマ」と読むようだけど、地元の人は「タイマサン」と呼んでいる。大元を辿ると、四国に行き着くらしい。
で、僕の出身地にある大麻山と所縁の神社のご祭神(女神)が「穀麻」、衣食の道を授けた神様として祀られている。
「ひみつの階段」シリーズ収録作品一覧
偕成社版・第1巻
ひみつの階段/印度の花嫁/春の珍客/日曜日/パルス/白日夢/君が降りてくる日/庭の小鳥/見えない地図/あとがき
偕成社版・第2巻
ねこの星座/物語をきかせて/四月天使/魔法の庭/冒険はおわらない/本日休館/王子さまがやってきた/あとがき
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ポプラ社「ひみつのドミトリー 乙女は祈る」
乙女は祈る/GIFT/わかれ道/華胥の国に遊び/森を抜ける道/Exile/夢売り/あとがき
※赤字:「ひみつの階段」シリーズでない読み切り短編
ポプラ社2002年版・第1巻
ひみつの階段/印度の花嫁/春の珍客/物語をきかせて/日曜日/Diary ~ダイアリー~/See You/あとがき
ポプラ社2002年版・第2巻
ねこの星座/四月天使/魔法の庭/冒険はおわらない/本日休館/パズル/遠い約束/あとがき
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ポプラ社2009年版(完全版)・第1巻
ひみつの階段/印度の花嫁/春の珍客/ねこの星座/物語をきかせて/四月天使/日曜日/Diary ~ダイアリー~/学園祭にいこう/もうひとつの 学園祭にいこう
ポプラ社2009年版(完全版)・第2巻
魔法の庭/冒険はおわらない/本日休館/乙女は祈る/GIFT/わかれ道/華胥の国に遊び/MAZE 迷路/See You/パズル/遠い約束/あとがき
※青字:新規描きおろし分
※紫字:同人誌に掲載分
※緑字:榎本司郎事務所版・コミックFantasy掲載分
「ひみつの階段 reunion」2012年版/2019年増補版
同人誌
li'l flowers/Tiny Tiny Girl
comicスピカに掲載。「つづきはまた明日」第4巻に収録。夏ちゃんたちの代より後の現代寄りの時代。スピンオフ的位置づけか?
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紺野キタ「ひみつの階段」(2009年版)を読み返す。現在ポプラ社から出ている新装版(完全版)2冊。
「ひみつの階段」の単行本は元々偕成社から出ていたのだけど、偕成社が漫画部門から撤退してポプラ社に移った経緯がある。
偕成社版1・2巻
↓
ポプラ社「ひみつのドミトリー 乙女は祈る」+ポプラ社2002年版1・2巻
※2002年版1・2巻には描きおろし、もしくは同人誌で発表された作品が追加収録されている
↓
ポプラ社2009年版(完全版)1・2巻
というバリエーションがある。
現在出版されている完全版で「ひみつの階段」のエピソードはフルコンプできるのだけど、実はそれまでの単行本には「ひみつの階段」シリーズでない読み切り短編がいくつか収録されている。
偕成社1巻
『パルス』『君が降りてくる日』『白日夢』『見えない地図』
同2巻
『王子さまがやってきた』
ポプラ社 ひみつのドミトリー 乙女は祈る
『森を抜ける道』『EXILE』『夢売り』
特に偕成社1巻に収録された初期の短編には現在と絵柄がかなり違う作品もある。
個人的には「王子さまがやってきた」「森を抜ける道」などが好きな作品。読み切りの短編だと初潮といった「ひみつの階段」シリーズには出てこないけど紺野作品的には重要と思われるモチーフが織り込まれていたりもする。
「reunion」入手。絵柄が変わっている。2002年版に収録された「遠い約束」が実質的な最終回だったけど、あれから10年が過ぎた。
三島は大柄になって、ほとんど男の子化している。夏ちゃんの代の奇談クラブの部長、平松さんだったか、ポップで別人のようなキャラデザとなっている。相方のメガネの女の子は名無しだったと思うけど、彼女が首からぶらさげているカメラ、クラシカルなデザインだけど光学ファインダーが描かれていない。デジカメかもしれないしそうでないかもしれない。小物類で意外と時代が分かっちゃうのだけど、時代を感じさせる小物類がほとんど出ないのも「ひみつの階段」の特徴かもしれない。
<追記>
Wikipediaに「ひみつの階段」の項があると知る。三島に下の名前があると知る。他にもいる。単行本を読んた限りでは出て来てないはずだが、サリーガーデンズ(昔あった紺野先生のホームページ)にでも記述があったのだろうか。
<2019.05.12追記>
コミティアで「ひみつの階段reunion」増補版を買う。表紙はカラー絵で小エピソードが追加されていた。ちなみに6ページ目と7ページ目、守護天使が登場する場面はオリジナルと比べて頁が左右逆に収録されていた。ミスだろう。
「ひみつの階段」(紺野キタ, ポプラ社)1・2巻を買う。「完全版」と銘打たれており、確か同人誌上で発表されたものだったか、これまで未収録だったエピソードが収録されている。ある意味、これでおしまい的な寂しさも感じる。
帯に「長らく入手困難だった傑作学園ファンタジー!」とある。元々は偕成社から出版されていて、ポプラ社で再度リリースしたもの。かたちを変えながらも単行本が出版されるというのは根強い人気がある証だろう。
「ひみつの階段」シリーズはこれで揃ったのだが、以前の単行本、偕成社版やポプラ社版(「ひみつのドミトリー」含む)に収録されていた短篇もいい。揃えたら単行本一冊分くらいにはなるだろう。デビュー間もない時期の作品も含まれていて、紺野作品の変遷がうかがえるのではないだろうか。
特典(ペーパー)がないか店員さんに尋ねる。一部の店舗でしか扱っていないとのことであった。ちと残念。