森薫「英國戀物語 エマ」8巻を読む。2年以上積ん読になっていた。7巻までで本編は終わり、8~10巻は外伝的な内容。
若き日のケリー夫人と傷心のエレノア嬢のエピソードが主な内容。他のサブキャラは忘れた。
エレノアのエピソードでは時間が経過したのだろう、少し大人びた容姿となっている。夏の浜辺で若い男(アーネスト)と逢う。アーネストはウィリアムの知人でもある。
作中、エレノアはエマのライバルという立ち位置。なのだが、エマより年下で育ちも良く健気な少女で、ウィリアムに婚約を破棄されてしまうのが可哀想なくらいだった。
思うに、エレノアより先にエマに逢ってしまったから。それ以上の理由はないような気がする。
お話自体は淡々としているか。見所は19世紀のイギリス。様々な階層の人々の活き活きとした暮らしぶり。描き込みの細かさに伺える。
……学生時代に当時の欧州の生活について触れた本を読んだことがある。煙突掃除夫の少年たち、確か癌(睾丸とか)で亡くなることが多かったのだとか。
日本のメイドもの、現実とは異なる点が多々あるだろう。欧州では階層も違って、もっとドライな関係の印象。日本ではどことなく番頭さんと「いとはん」「こいさん」の感覚が残っているのかもしれない……と思っていたが、「風とともに去りぬ」を観ると黒人の女中がヒロインに苦言を呈する場面もあった。
<追記>
単行本をはじめから読み返す。エレノアはまだまだ遊びたい盛りの女の子だったのだけど、破談で一転、大人の女性になってしまった。
分析的な見方をすると、陰影を帯びた女となったエレノアはより魅力を増したのだけど、ポッと出のアーネストにくれてやるのも惜しいというところだろうか。
個人的には不義理は不義理だとは思う。