AmazonのKindleストアで電子書籍をセルフ出版してます

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(石見の文芸シリーズ)
石見の姫神伝説:乙子狭姫、胸鉏比売、天豊足柄姫命、櫛代賀姫命など
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石見の伝説:伝説の地を巡る
https://www.amazon.co.jp/dp/B09RJZVPQF/
神楽と文芸(総論): 石見神楽、芸北神楽、神代神楽、太々神楽など
https://www.amazon.co.jp/dp/B09MRFXFWS/
神楽と文芸(各論):神楽の重要演目・人気演目
https://www.amazon.co.jp/dp/B09PH6L1RG/
神楽と文芸(各論2):鬼退治
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神楽と文芸(各論3):神話・歴史・エトセトラ
https://www.amazon.co.jp/dp/B09WW1R6N6/
昔話はなぜ面白いか(上)
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昔話はなぜ面白いか(下)
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(その他)
ブログから電子書籍までニッチ戦略の執筆術
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三泊四日の大腸ESD入院記
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2024年4月20日 (土)

行為項分析――丸瀬山の山姥

◆あらすじ

 平安時代のはじめ、唐から帰ってきた弘法大師は金剛杖をつきならしながら宇坂峠を越えて市木の里へ入ってきた。峠から真正面にあおぐ丸瀬山の気高い姿は若い弘法大師の心をとらえた。この山を開いて道場を建て、金剛峯寺を開基しようと思った。大師はいばらの茂みを分けて丸瀬山に入った。そして谷から峯へと調査して回った。調査も大体終わって谷の数も峯の数も開基に都合のよいことが分かってきた。ところがこの事を知ってこの山に住む山姥が気をもみはじめた。このままでおくと山は開かれ大勢の人が出入りするようになって住む所が荒らされてしまう。その様な事にならぬよう細工をしてやろうと言って山姥は谷を一谷隠してしまった。弘法大師が最後の調査をしてみると、開山には四十八谷なければいけないのに四十七谷しかない。不審に思ってもう一度数えてみた。しかしどうしても四十七谷しかない。遂に諦めるより仕方がなかった。しかし、せめてこの山へ入った記念にと、大師は三体の観音さまを刻んで山に留め、次の山をもとめて三坂を超え芸州路へ向かった。こうして丸瀬山は山姥の邪魔でついに開かれることなく終わった。今でも隠しが谷といってその時山姥が隠したという谷がある。

 大師はまたこのとき丸瀬山から日本海の激しい波風の有様を見て、行き交う船の安全を祈願して仏像を残された。その後丸瀬山には夜な夜な灯がともり、沖に出た船はこの灯を唯一の目印にした。ことに海の荒れる時は、どんな大荒れにも消えることのないこの灯を頼って帰れば難船を免れた。

 観音さまの一体は観音寺原に、一体は麦尾に飛んで行き、一体は山に残っている。山に残った一体は昔ある人が丸瀬山の頂きの岩屋で見かけたので、明くる日に迎えて帰ろうと思っていったが、どうしても見つけることができなかったという。

◆モチーフ分析

・弘法大師、市木の里へ入ってくる
・弘法大師、丸瀬山の山並みに惹かれる
・弘法大師、丸瀬山に道場を開基しようと考える
・弘法大師、開基のための調査を行う
・調査は順調に進む
・丸瀬山に住む山姥がこのままでは丸瀬山に人が増え、自分の住処が荒らされると懸念する
・山姥、谷を一つ隠す
・弘法大師が谷の数を数えると四十七谷しかない
・四十八谷に一谷足りないので諦める
・弘法大師、市木の里を去る
・弘法大師、丸瀬山に仏像を残した
・その後、丸瀬山の漁り火によって多くの船が難破を免れた
・仏像は二体が外に流出した
・残りの一体は頂きの岩屋で見つかったが、その後見た者はいない

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:弘法大師
S2:山姥

O(オブジェクト:対象)
O1:市木の里
O2:丸瀬山
O3:開基の志
O4:調査
O5:谷
O6:四十七谷
O7:四十八谷
O8:仏像
O9:漁り火
O10:船
O11:難破
O12:岩屋

+:接
-:離

・弘法大師、市木の里へ入ってくる
(来訪)S1弘法大師:S1弘法大師+O1市木の里
・弘法大師、丸瀬山の山並みに惹かれる
(魅惑)S1弘法大師:S1弘法大師+O2丸瀬山
・弘法大師、丸瀬山に道場を開基しようと考える
(決意)S1弘法大師:S1弘法大師+O3開基の志
・弘法大師、開基のための調査を行う
(調査)S1弘法大師:S1弘法大師+O2丸瀬山
・調査は順調に進む
(経過)O4調査:O4調査+O2丸瀬山
・丸瀬山に住む山姥がこのままでは丸瀬山に人が増え、自分の住処が荒らされると懸念する
(懸念)S2山姥:S2山姥-O2丸瀬山
・山姥、谷を一つ隠す
(秘匿)S2山姥:S2山姥-O5谷
・弘法大師が谷の数を数えると四十七谷しかない
(検算)S1弘法大師:S1弘法大師+O6四十七谷
・四十八谷に一谷足りないので諦める
(断念)S1弘法大師:S1弘法大師-O3開基の志
・弘法大師、市木の里を去る
(退去)S1弘法大師:S1弘法大師-O1市木の里
・弘法大師、丸瀬山に仏像を残した
(安置)S1弘法大師:O2丸瀬山+O8仏像
・その後、丸瀬山の漁り火によって多くの船が難破を免れた
(効験)O9漁り火:O10船-O11難破
・仏像は二体が外に流出した
(流出)O8仏像:O2丸瀬山-O8仏像
・残りの一体は頂きの岩屋で見つかったが、その後見た者はいない
(発見)O8仏像:O8仏像+O12岩屋
(行方不明)O8仏像:O2丸瀬山-O8仏像

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

   聴き手(弘法大師は無事開基できるか)
            ↓
送り手(山姥)→ 谷を一つ隠す(客体)→ 受け手(弘法大師)
            ↑
補助者(なし)→  山姥(主体)← 反対者(弘法大師)

  聴き手(弘法大師の残した仏像はどうなるか)
            ↓
送り手(弘法大師)→ 仏像(客体)→ 受け手(船)
            ↑
補助者(なし)→  弘法大師(主体)← 反対者(なし)

といった二つの行為項モデルが作成できるでしょうか。弘法大師は市木の里の丸瀬山で開基しようとするものの、それを危惧した山姥が谷を一つ隠すことで妨害します。

 弘法大師―山姥、四十七谷―四十八谷、開基―谷、といった対立軸が見出せます。仏像/漁り火から弘法大師の高い法力による救済の暗喩が同定できます。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

弘法大師♌♎―山姥♂―船♁

 といった風に表記できるでしょうか。丸瀬山に開基することを価値☉とおくと、弘法大師は開基の適当な場所を選定しますので審判者♎となります。船自体は登場人物ではありませんが、船乗りたちを登場人物と置くと、弘法大師が残した仏像の効験によって難破を免れますので享受者♁と見ることができます。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍は山姥が谷を一つ隠してしまうことでしょうか。「弘法大師―四十七谷/四十八谷―山姥」といった図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.101-102.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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2024年4月19日 (金)

益田市に復活した映画館が取り上げられる

NHK+で「さんいんスペシャル いいいじゅー!!「益田市」」を見る。益田市に映画館を復活させた夫婦が取材される。以前、益田市にも映画館はあったが、2008年に閉館していたとのこと。映画館の場所は駅裏のレジャービル内。益田駅からどういうルートで行くのか分からない。駐車場があるのかも分からない。旦那さんは東京のミニシアターで働いていた。益田市出身の奥さんと益田市に移住することにし、劇場を見て保存状態がよかったため復活を決意したとのこと。開業資金として2000万円が必要だった。クラウドファンディングと銀行からの融資、地元企業の協賛等で賄った。映画館一館の経営が成り立つには人口10万人必要だという。益田市の人口は4万4千人。収入は運営費に消えるという。生活費は音声データ起こしの副業で賄っているとのこと。30人くらい入れば利益が出る水準とのこと。顧客はシニア層が中心。高校生といったハイティーンの層の来場が少ないとのこと。今はオンデマンド配信が中心で、劇場で映画を見る体験をしていないのが大きいようだ。彼らをいかにして振り向かせるか。スクリーンは意外と大きい。相模原市の障がい者施設での大量殺傷事件を取り上げた映画を上映するなど独自の取り組みも行っている。観客と夫妻との会話があり、顧客の意見は随時汲み取っているようだ。

……応援してあげたい気持ちはあるが、諸事情で益田まで映画を見に行くのは難しそうだ。

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行為項分析――鏡が渕

◆あらすじ

 鳴美の堤から切り立った岩の上に登ると、小さな祠(ほこら)がある。竜の明神で、祠の前の岩角に立っている松を髪かけの松という。弘安(こうあん)正応(しょうおう)の頃、阿波麻生庄の領主小笠原長親は海辺防備の功によって村之郷に移封されて海を渡った。後に川本温湯城三原丸小城を中心にして十五代およそ三百年間この辺りを治めた小笠原氏の先祖である。長親は村之郷に来ると南山城を築いて根拠地とした。重臣に何々太夫宗利という武士がいた。まだ若年であったが優れた武士だったので軍師として重く用いた。足利の勢が攻め寄せた時、川を上って魚断(いおき)りに押し寄せると味方の軍勢は天嶮によってこれを防ぎ敵は意を断(き)って引き返したので魚断りというようになった。

 この戦いで最も手柄を立てたのは軍師の宗利だった。それで長親は宗利に自分の娘を妻に与えた。ところがしばらく経って疫病にかかり生まれもつかぬ醜い女になった。その頃小間使いに美しい女があって、宗利は次第に本妻を避けるようになった。本妻はこれを恨んで、ある日宗利を動かして小間使いを連れて魚断りの景色を見に出かけた。そして景色のよい明鏡台へいって、しばらく休息していると、小間使いは懐中から小さな鏡を取り出してほつれた髪をかきあげた。その時後ろから忍び寄った本妻はいきなり小間使いを岩の上から突き落とした。

 この時小間使いは手鏡に映った本妻の顔からそれと察したので、本妻の袖をしっかり掴んだ。それで、あっという間に二人の女は相重なって落ちていった。驚いた宗利が駆け寄ってみると、数十丈の岩壁を悲鳴をあげて落ちていく二人の黒髪はどちらも竜となって互いにもつれ争いながら途中の松の枝にかかって抜け、二人はそのまま遙か谷底の深さも知れぬ渕に呑まれてしまった。宗利は意外のことに驚くとともに、深く嘆き悲しんで蟇田まで帰り、自刃して果てた。二人の女を呑んだ渕を鏡が渕といい、以来二人は竜となって永遠に相戦ったと言われている。古くから三人を神に祀ってあったのを昭和九年の明神勧請のときに合祀した。

◆モチーフ分析

・足利との戦いで宗利、軍功を挙げる
・宗利、小笠原長親の娘を賜る
・宗利の本妻、疫病で醜い容姿になってしまう
・宗利、美しい小間使いに心を移してしまう
・本妻、宗利と小間使いを魚断りに誘う
・小間使い、髪のほつれを直そうとして背後に本妻が迫っていることに気づく
・本妻の裾を掴んだ小間使い、共に崖から転落する
・二人の髪が竜となる
・二人は渕に飲み込まれる
・衝撃を受けた宗利、自刃する
・本妻と小間使いは竜となって永遠に争った
・三人を祀った祠が建った

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:宗利
S2:小笠原長親
S3:本妻
S4:小間使い

O(オブジェクト:対象)
O1:足利
O2:軍功
O3:疫病
O4:魚断り
O5:崖
O6:竜
O7:渕
O8:祠

m(修飾語)
m1:醜い

+:接
-:離

・足利との戦いで宗利、軍功を挙げる
(戦功)S1宗利:S1宗利+O2軍功
・宗利、小笠原長親の娘を賜る
(結婚)S2小笠原長親:S1宗利+S3本妻
・宗利の本妻、疫病で醜い容姿になってしまう
(変貌)S3本妻:S3本妻+m1醜い
・宗利、美しい小間使いに心を移してしまう
(浮気)S1宗利:S1宗利+S4小間使い
・本妻、宗利と小間使いを魚断りに誘う
(勧誘)S3本妻:S4小間使い+O4魚断り
・小間使い、髪のほつれを直そうとして背後に本妻が迫っていることに気づく
(接近)S4小間使い:S4小間使い+S3本妻
・本妻の裾を掴んだ小間使い、共に崖から転落する
(転落)S4小間使い:S4小間使い+S3本妻-O5崖
・二人の髪が竜となる
(変身)S4小間使い+S3本妻:S4小間使い+S3本妻+O6竜
・二人は渕に飲み込まれる
(水没)S4小間使い+S3本妻:S4小間使い+S3本妻+O7渕
・衝撃を受けた宗利、自刃する
(自害)S1宗利:S1宗利-S1宗利
・本妻と小間使いは竜となって永遠に争った
(闘争)S3本妻:S3本妻+S4小間使い
・三人を祀った祠が建った
(祭祀)S2小笠原長親:S2小笠原長親+O8祠

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

   聴き手(長親は宗利にどう報いるか)
            ↓
送り手(宗利)→ 軍功(客体)→ 受け手(小笠原長親)
            ↑
補助者(なし)→  宗利(主体)← 反対者(足利)

  聴き手(本妻と小間使いの関係はどうなるか)
             ↓
送り手(本妻)→ 崖から突き落とす(客体)→ 受け手(小間使い)
             ↑
補助者(宗利)→  本妻(主体)← 反対者(小間使い)

といった行為項モデルが作成できるでしょうか。小間使いに心を移した宗利を補助者とするのは疑問含みですが、一応そうしました。小間使いを妬んだ本妻は小間使いを崖から突き落とそうとしますが、鏡でその姿を見られてしまい道連れにされてしまうという筋立てです。嫉妬は深く、二人は竜となって永遠に争い続けたという話でもあります。

 本妻―小間使い、宗利―本妻、宗利―小間使い、といった対立軸が見出せます。髪/竜から女の情念の激しさといった暗喩を同定できます。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

1. 宗利♌♁―本妻☉―小笠原長親♎

2. 本妻♌♁―小間使い♂♁―宗利♎☉

 といった風に表記できるでしょうか。小笠原長親は宗利の軍功に報いるため娘と結婚させますので本妻を価値☉と置くことができます。ここでは宗利は享受者♁となります。
 一方、本妻からすると、宗利の愛を小間使いに奪われてしまいますので、宗利を価値☉と置くことができます。本妻、小間使いの双方が享受者♁となります。二人の転落死によって宗利は自害しますので審判者♎とも置けるでしょうか。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍は本妻と小間使いの双方が滝壺に転落し、髪が竜となることでしょうか。「本妻―髪/竜―小間使い」という図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.99-100.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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2024年4月18日 (木)

行為項分析――賀茂神社の三重の塔

◆あらすじ

 昔、石見町中野の賀茂神社の三重の塔を建てた時のこと。この塔は有名な左甚五郎に頼んで建てた。甚五郎は日本一の大工だから、どんな力を持っているかと思って原山の山姥が様子を見にやってきた。山姥が甚五郎にこの塔を一夜で建てることができるか尋ねた。甚五郎は一夜で建ててみせると請け負った。すると山姥が甚五郎が一夜で建てるなら自分も一夜で機を織ってその布で原山を包んでみせると言った。勝負をすることになった。夕方から仕事にかかった甚五郎は一生懸命細工をしたが夜明け近くなったので、ふと原山の方をみると、一面に白い布らしいものが山を包んでいる。負けてしまったと思った甚五郎は道具を片付けて早々に逃げ出した。日和を通って川戸越しの月の夜という所まで逃げたが、夜が明けたので原山の辺りを見回すとどうしたことか別に白い布らしいものは掛かっていない。よく考えてみると、どうも月の光で白く見えたのを布で包んであると勘違いしたのだと気がついた。しかし、今更帰る訳にもいかないので逃げていった。「月の夜」という地名は今でも残っている。

◆モチーフ分析

・賀茂神社の三重の塔を左甚五郎が建てた
・様子を見に原山の山姥がやって来た
・山姥、塔を一夜で建てることが出来るか甚五郎に尋ねる
・甚五郎、一夜で出来ると請け負う
・山姥、ならば自分は一夜で機を織って原山を包んでみせると言った
・甚五郎と山姥、勝負することになる
・夕方から仕事を始めた甚五郎、夜明け近くに原山の方を見ると、一面に白い布が包んである
・負けたと思った甚五郎、道具を片付けて逃げ出す
・月の夜まで逃げたが、夜明けに原山を見ると白い布は掛かっていない
・月の光で白く見えたのを勘違いしたらしい
・今更帰る訳にはいかないので逃げていった

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:左甚五郎
S2:山姥

O(オブジェクト:対象)
O1:賀茂神社
O2:三重の塔
O3:原山
O4:白い布
O5:月の夜
O6:月の光

m(修飾語)
m1:一夜の

+:接
-:離

・賀茂神社の三重の塔を左甚五郎が建てた
(建築)S1左甚五郎:S1左甚五郎+O2三重の塔
・様子を見に原山の山姥がやって来た
(来訪)S2山姥:S2山姥+O1賀茂神社
・山姥、塔を一夜で建てることが出来るか甚五郎に尋ねる
(質問)S2山姥:S2山姥+S1左甚五郎
・甚五郎、一夜で出来ると請け負う
(請負)S1左甚五郎:S1左甚五郎+m1一夜の
・山姥、ならば自分は一夜で機を織って原山を包んでみせると言った
(応酬)S2山姥:S2山姥+m1一夜の
・甚五郎と山姥、勝負することになる
(勝負)S1左甚五郎:S1左甚五郎+S2山姥
・夕方から仕事を始めた甚五郎、夜明け近くに原山の方を見ると、一面に白い布が包んである
(視認)S1左甚五郎:S1左甚五郎+O4白い布
・負けたと思った甚五郎、道具を片付けて逃げ出す
(逃亡)S1左甚五郎:S1左甚五郎-O1賀茂神社
・月の夜まで逃げたが、夜明けに原山を見ると白い布は掛かっていない
(逃亡)S1左甚五郎:S1左甚五郎+O5月の夜
(視認)S1左甚五郎:O3原山-O4白い布
・月の光で白く見えたのを勘違いしたらしい
(誤認)S1左甚五郎:S1左甚五郎-O3原山
・今更帰る訳にはいかないので逃げていった
(逃亡)S1左甚五郎:S1左甚五郎-O1賀茂神社

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

  聴き手(左甚五郎は山姥との勝負に勝てるか)
             ↓
送り手(左甚五郎)→ 三重の塔(客体)→ 受け手(山姥)
             ↑
補助者(なし) →  左甚五郎(主体)← 反対者(山姥)

といった行為項モデルが作成できるでしょうか。左甚五郎は賀茂神社の三重の塔を一晩で完成させる、山姥は一晩で原山を布で覆うと勝負します。月の光を白い布と誤認した左甚五郎は負けたと逃亡してしまいます。後にそれは誤認だったと分かりますが今更戻る訳にもいかなかったというお話です。

 左甚五郎―山姥、三重の塔―白い布、白い布―月の光、といった対立軸が見出せます。月の光/白い布といった誤認の暗喩が同定できます。

 左甚五郎は伝説的な腕前の大工です。対する山姥は超自然的な力の象徴です。両者を対比させることで伝説の面白みが生じます。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

左甚五郎♌♎♁―山姥♂

 といった風に表記できるでしょうか。価値☉を勝負に勝つこととすると、左甚五郎は享受者となります。また、自身で勝ち負けを判断していますので審判者♎ともおけます。左甚五郎と山姥との二人だけの勝負となりますので援助者は存在しません。

◆元型分析

 山姥はユングの元型(アーキタイプ)として解釈すると太母(great mother)とおけるでしょうか。超自然的な力の象徴である山姥は時として人を喰らう恐ろしい存在でもあります。このお話では山姥は逃げ出した左甚五郎に対して特に何もしていません。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍は一夜で山を布で覆うと宣言するところでしょうか。「左甚五郎―塔/布―山姥」といった図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.97-98.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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2024年4月17日 (水)

行為項分析――犬伏山の大蛇

◆あらすじ

 昔、邑智郡都賀村の都賀西に高橋備前守という城主がいた。備前守に仕える三十六人の小姓の中に松原千代坊師という十七八ばかりの勇士がいた。ある日集まって話をしていると年長の小姓が犬伏山の大蛇の話を持ち出して、誰か嘘かまことか見届けてくる者はいないかという話になった。返事をする者はいなかったが、千代坊が名乗り出た。千代坊は他の小姓たちから妬まれていたのである。大蛇を従えて帰ったら残り三十五人の大小を褒美として進ぜようという話になった。千代坊は褒美は断ったが、これは皆の企みだとすぐ分かった。

 千代坊は独り犬伏山に向かった。犬伏山に近い向山の出口に一軒家があって老人夫婦が住んでいた。夕方、そこに千代坊がやって来て水を一杯所望した。千代坊はこれから犬伏山を越えると告げた。老人夫婦はここから一里あまり奥に椿の大木があって、そこに年を経た雄雌の大蛇がいる。これまで夜に犬伏山を通って災難に遭った者は数え切れないと引き留めたが、千代坊は礼を言って山へ入って行った。

 だんだん暗くなり、山は次第に深くなった。椿の木の下で大蛇が出るのを待ち受けた。真夜中になって大蛇が下りてきた。千代坊は大蛇を真っ二つに斬った。次に雌蛇が下りてきた。これも一刀のもとに胴切りにした。夜が明けてきた。しかし、千代坊は大蛇の毒気を全身に浴びて身体が次第にしびれてきた。勇気を奮い起こして谷底へ下りて大蛇の耳を四つ切り取って元のところへ這い上がったが、毒が全身にまわり気を失ってしまった。

 夜が明けるのを待って老人たちが山へ登ってきた。そして倒れている千代坊を助け起こして家へ連れ帰って介抱をして城へ知らせた。千代坊が目を覚ましたときには乗り物で城中へ迎え入れられた後であった。

 千代坊の勇気に感心した備前守は三十五人の小姓たちを閉門にし、三十五の大小を改めて褒美に取らせた。千代坊は身体が回復すると暇を願い、都賀東の金東寺に入って坊さんとなった。そして名を教雲と改め仏道の修行にいそしんだ。その子孫は吾郷村に今も続いている。

◆モチーフ分析

・都賀西の高橋備前守に仕える三十六人の小姓がいた
・その中に千代坊という十七八の勇士がいた
・ある日、小姓たちが犬伏山の大蛇の噂をした
・千代坊が大蛇を退治しに行くという話になった
・残り三十五人の大小を賭ける話となった
・千代坊、犬伏山に向かう
・途中、老人の家に立ち寄る
・老人たち、千代坊を引き留めるが、千代坊、出立する
・犬伏山の椿の木の下で千代坊、大蛇を退治する
・千代坊、もう一匹の大蛇も退治する
・千代坊、証拠に大蛇の耳を切り取る
・大蛇の毒気に当てられた千代坊、意識を失う
・老人たちがやって来て千代坊を介抱する
・千代坊が目覚めたときには城中にいた
・備前守、千代坊の勇気を讃え、褒美を取らせる
・千代坊、暇を乞い、仏門に入る

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:備前守
S2:小姓
S3:千代坊
S4:老人

O(オブジェクト:対象)
O1:都賀西
O2:犬伏山
O3:大蛇
O4:大小
O5:耳
O6:城中
O7:仏門

m(修飾語)
m1:毒に侵された

+:接
-:離

・都賀西の高橋備前守に仕える三十六人の小姓がいた
(存在)S1備前守:S1備前守+S2小姓
・その中に千代坊という十七八の勇士がいた
(存在)S3千代坊:S3千代坊+S1備前守
・ある日、小姓たちが犬伏山の大蛇の噂をした
(噂)S2小姓:S2小姓+O3大蛇
・千代坊が大蛇を退治しに行くという話になった
(強要)S2小姓:S3千代坊+O3大蛇
・残り三十五人の大小を賭ける話となった
(賭け)S2小姓:S3千代坊+O4大小
・千代坊、犬伏山に向かう
(出立)S3千代坊:S3千代坊+O2犬伏山
・途中、老人の家に立ち寄る
(訪問)S3千代坊:S3千代坊+S4老人
・老人たち、千代坊を引き留める
(引き止め)S4老人:S3千代坊-O2犬伏山
・千代坊、出立する
(出立)S3千代坊:S3千代坊+O2犬伏山
・犬伏山の椿の木の下で千代坊、大蛇を退治する
(退治)S3千代坊:S3千代坊+O3大蛇
・千代坊、もう一匹の大蛇も退治する
(退治)S3千代坊:S3千代坊+O3大蛇
・千代坊、証拠に大蛇の耳を切り取る
(獲得)S3千代坊:S3千代坊+O5耳
・大蛇の毒気に当てられた千代坊、意識を失う
(失神)S3千代坊:S3千代坊+m1毒に侵された
・老人たちがやって来て千代坊を介抱する
(介抱)S4老人:S4老人+S3千代坊
・千代坊が目覚めたときには城中にいた
(覚醒)S3千代坊:S3千代坊+O6城中
・備前守、千代坊の勇気を讃え、褒美を取らせる
(褒章)S1備前守:S3千代坊+O4大小
・千代坊、暇を乞い、仏門に入る
(退職)S3千代坊:S3千代坊-S1備前守
(出家)S3千代坊:S3千代坊+O7仏門

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

 聴き手(千代坊は小姓たちの謀略にかかってしまうのか)
           ↓
送り手(千代坊)→ 大蛇退治(客体)→受け手(小姓)
           ↑
補助者(備前守)→ 小姓(主体)← 反対者(千代坊)

  聴き手(千代坊は果たして大蛇を退治できるか)
           ↓
送り手(千代坊)→ 大蛇の耳(客体)→受け手(備前守)
           ↑
補助者(老人)→ 千代坊(主体)← 反対者(小姓)

 聴き手(事件の後、千代坊はどういう行動をとるか)
           ↓
送り手(千代坊)→ 出家(客体)→受け手(備前守)
           ↑
補助者(なし)→ 千代坊(主体)← 反対者(小姓)

といった三つの行為項モデルが作成できるでしょうか。千代坊は小姓たちの謀略によって大蛇退治を押し付けられますが、見事果たしてみせます。備前守から褒章の大小を受け取った千代坊ですが、その後出家してしまいます。仏門に入った理由は明らかにされていませんが、大蛇退治と関係があるかもしれません。

 千代坊―小姓、千代坊―備前守、千代坊―老人、千代坊―大蛇、耳―大小、といった対立軸が見出せます。耳/大小/褒章といった暗喩が同定できるでしょうか。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

千代坊♌♁―大蛇☉―小姓♂―備前守♎―老人☾(♌)

 といった風に表記できるでしょうか。大蛇退治を価値☉と置くと千代坊は享受者♁となります。備前守は審判者♎と置けます。老人は千代坊を介抱しますので援助者☾となります。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍は大蛇が雄雌の二匹登場し、退治した証拠として耳を持ち帰ることでしょうか。「千代坊―大蛇―雄/雌」「千代坊―大蛇―耳―大小―小姓」といった図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.93-96.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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2024年4月16日 (火)

行為項分析――名馬池月

◆あらすじ

 治承(じしょう)三年の頃は邑智郡阿須那(あすな)の牛馬市が最も盛んな時だった。出雲の国飯石郡松笠村に竜頭ヶ滝という滝があった。後に名馬として有名になった池月はこの滝の近くで生まれた。小さいとき母馬が死んだ。母馬を探して滝の辺りをさ迷っている内に自分の姿が滝壺に映るのを母馬と思って滝壺に飛び込んだ。しかし水の中には母馬はいないので上に上がってみると水の中に母馬の姿が見える。そこで飛び込むが、やはり母馬はいない。こうした事を繰り返す内に泳ぎが上手になった。

 治承三年四月の阿須那の市にこの馬は馬喰(ばくろう)に連れられて都賀本郷まで来た。が、江川は雪解けで水が多く渡ることができない。しかし川向こうの都賀西では市へ行く牛や馬がひっきりなしに通っていく。これを見た馬は激しい流れに飛び込んで川を真一文字に渡って都賀西から阿須那の市場に駆け込んだ。驚いた人々が見ていると一人の商人が池月を栢(かや)の木に繋いだ。

 それからしばらくして雲州から馬の持ち主がやって来た。そして馬を売ろうとしたが買う人がいない。羽村長田までいったところで買い手がついた。その男は指を六本出した。持ち主は六百文だと思って手を打った。ところが買い手は六百両出したので売主は驚いた。この馬は名馬の相があり六百両でも安い位だとのことであった。

 この馬は後に東国に下って名馬の名が高くなり、遂に源頼朝に買い上げられた。元暦(げんりゃく)元年正月、宇治川の合戦に佐々木四郎高綱が池月に打ちまたがって先陣の名を天下にあげた。池月を繋いだ栢の木は阿須那の賀茂神社の境内に今もある。

◆モチーフ分析

・母馬をなくした子馬がいた
・子馬は滝壺の水面に映った自分の姿を母馬と思って飛び込んだ
・それを繰り返す内に泳ぎが上手になった
・江川は雪解けの水で増水していた
・馬は江川に飛び込んで一直線に対岸まで泳ぎ切った
・馬の買い手が持ち主に指六本示した
・それは六百文ではなく六百両だった
・その馬は名馬の相があるので六百両でも安いと評された
・その馬は東国へ上がり源頼朝に買い上げられた
・宇治川の先陣争いでその馬は見事に勝利した

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:子馬
S2:母馬
S3:買い手
S4:持ち主
S5:源頼朝

O(オブジェクト:対象)
O1:滝壺
O2:江川
O3:対岸
O4:指六本
O5:六百両
O6:名馬の相
O7:東国
O8:先陣争いでの勝利

m(修飾語)
m1:泳ぎ上手
m2:増水

+:接
-:離

・母馬をなくした子馬がいた
(喪失)S1子馬:S1子馬-S2母馬
・子馬は滝壺の水面に映った自分の姿を母馬と思って飛び込んだ
(飛び込み)S1子馬:S1子馬+O1滝壺
・それを繰り返す内に泳ぎが上手になった
(上達)S1子馬:S1子馬+m1泳ぎ上手
・江川は雪解けの水で増水していた
(増水)O2江川:O2江川+m2増水
・馬は江川に飛び込んで一直線に対岸まで泳ぎ切った
(飛び込み)S1子馬:S1子馬+O2江川
(渡河)S1子馬:S1子馬+O3対岸
・馬の買い手が持ち主に指六本示した
(提示)S3買い手:S3買い手+O4指六本
・それは六百文ではなく六百両だった
(大儲け)S4持ち主:S4持ち主+O5六百両
・その馬は名馬の相があるので六百両でも安いと評された
(鑑定)S3買い手:S1子馬+O6名馬の相
・その馬は東国へ上がり源頼朝に買い上げられた
(東上)S1子馬:S1子馬+O7東国
(献上)S1子馬:S5源頼朝+S1子馬
・宇治川の先陣争いでその馬は見事に勝利した
(勝利)S1子馬:S1子馬+O8先陣争いでの勝利

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

   聴き手(母馬を失った子馬はどうなるか)
           ↓
送り手(子馬)→ 母馬(客体)→受け手(子馬)
           ↑
補助者(自分の影)→ 子馬(主体)← 反対者(なし)

   聴き手(馬の価値はいかほどか)
           ↓
送り手(買い手)→ 六百両(客体)→受け手(持ち主)
           ↑
補助者(なし)→ 買い手(主体)← 反対者(なし)

   聴き手(馬は果たして活躍するか)
           ↓
送り手(馬)→ 先陣争いの勝利(客体)→受け手(佐々木高綱)
           ↑
補助者(源頼朝)→ 馬(主体)← 反対者(ライバルの馬)

といった三つの行為項モデルが作成できるでしょうか。島根県邑智郡の名馬池月伝説は奥出雲の竜頭ヶ滝でのエピソード、江川での渡河、名馬の相、頼朝への献上、宇治川での先陣争いといったエピソードを含みます。子馬の鑑定では買い手が主体となります。

 子馬―母馬、子馬―自分の影、子馬―滝壺、子馬―泳ぎ、子馬―名馬の相、馬―ライバルの馬、といった対立軸が見出せます。泳ぎ上手/先陣争いでの勝利/名馬の相といった暗喩が同定できます。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

子馬♌☉―母馬☾(♌)―買い手♎♁―持ち主☾(♎)

 といった風に表記できるでしょうか。子馬には名馬の相がありますので価値☉となります。それを見抜いた買い手が審判者♎であり享受者♁となります。

馬♌☉―ライバルの馬♂―佐々木高綱♁――源頼朝☾(♁)

 となるでしょうか。成長した馬は勝利をもたらしますので価値☉であり、乗り手の佐々木高綱は享受者♁となります。高綱に馬を下賜した源頼朝は高綱の援助者☾となります。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍は、自分の影を母馬と間違えて滝壺に飛び込む、増水した江川を渡河する、六百文どころか六百両で売れるといったところでしょうか。「子馬―滝壺―泳ぎ」「子馬―渡河―江川」「子馬―六百文/六百両―買い手」といった図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.91-92.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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2024年4月15日 (月)

バ美肉のバーチャル人類学

「最深日本研究~外国人博士の目~」をNHK+で見る。スイス人の若手女性人類学者がメタバース世界で日本人男性が美少女のアバターを使う割合が非常に多いことに着目したもの。声はボイスチェンジャーで変換する。当初はSNSで接触を図ったが欧米人の女性であることで信用されなかったという。そこで自身もメタバース世界に入り彼らと一年かけて交流することで距離を縮めていったとのこと。発表された論文では歌舞伎の女形や人形浄瑠璃と関連づけられて論じられているとのこと。美少女のアバターをまとった男性は「バ美肉」と呼ばれる。「バーチャル 美少女 受肉」の略とのこと。受肉には宗教的な意味合いはない。その女性研究者の6度目の来日でのフィールドワークが取材される。男性なのに女性声優的なアニメ声をだせる特異なスキルを持つ男性と直接面会し発声のコツを聴く。男性も習得するのに2年かかったという。研究者によると、カワイイ仕草も実際にやってみると難しいという。文化人類学は過去には主に未開民族のフィールドワークを中心にしていたが、この女性研究者はバーチャル人類学という領域を開拓しつつある。研究者の考察では日本人男性はカワイイになりきることでストレスから解放される。カワイイだと失敗しても許されるからとしていた。ある男性はインタビューで容易に他人と交流できるのが魅力と語っていた。この研究者はロシアからスイスに移住した際、フランス語を憶える必要があり、その際にフランス語に翻訳された日本の漫画を読んで学習したのがきっかけとのこと。

メタバースの利用者は4億人に上るという。期待外れと言われたりしたが、結構な数のアーリーアダプターがいるという印象。僕自身は眼鏡をかけているのでヘッドマウントディスプレイを装着するには困難があるかもしれない。必要なパソコンのスペック等も知らない。ゲームプレイの経験は実質2Dまでで、オープン3DCGの世界だと迷ってしまうタイプである。そこまでして他人と交流したくないという気質なのである。

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2024年4月14日 (日)

『石見の民話』分析二周目、石東編まで終わる

未来社『石見の民話』の分析二周目、石東編まで終わった。グレマスの行為項分析とスーリオの関係分析に慣れるために行っている、そしてそれらの分析手法が昔話で適用可能か検証しているという流れ。大体の感じは把握できたのではないかと思う。

検証しているというのは、グレマスはプロップの昔話の形態学に影響を受けているからである。プロップが分析したのはあくまで「ロシアの」「魔法昔話」についてである。要するに冒険譚についてのものなのである。

昔話には冒険譚の他、滑稽譚やナンセンスなものも含まれる。そういったものにも適用可能か、『石見の民話』は幸い幅広いタイプの昔話/伝説が多数収録されているのでちょうどいいと思ったのである。

一周目であらすじは既に起こしているのでさほど苦痛には感じない。昔話の分析で最も負荷がかかるのはあらすじに起こすところである。

グレマスの行為項分析に関しては、グレマス自身の著作は難解でよく分からず、手法は高田本に頼ることとなった。他、行為項モデルについては、見目宗弘「ごんは、なぜ、土間に栗を置いたのか? ―グレマス「行為項モデル」に基づく『ごんぎつね』の解釈―」という論文も参照している。

「浮布の池」を分析したところで聴き手の関心(物語の焦点は何か)という独自の項目を付け加えた。行為項モデルの客体欄に書いてもいいのかもしれないが、別にした方が分かりやすいかなと考えてのことである。

また、石東編ではないが「えんこうの一文銭」をふと思い出したのも利いている。この話は本来は補助者である猫が途中から主役に入れ替わってしまう。そういう点で単一のモデルのみで説明できない事例である。

ネットを適当に検索した印象で言うと、グレマスの行為項分析とスーリオの関係分析はあまり普及していないようだ。というのは、おそらく分析を実施した論文を読んでも記号の羅列で何が書かれているか書いた本人以外分からないからだ。占星術記号で登場人物の役割を表記するというのは慧眼だと思うのだが。

昔話の研究では取り入れられておらず、昔話研究者は従来通りのモチーフ分析を行っているようにも見える。これは行為項分析や関係分析だと情報を落とし過ぎてしまう結果になってしまうからではないか。

物語を要素に還元して骨格を明らかにするという手法は、一見複雑に見える物語も骨格を取り出すと案外シンプルな構造となっているということなのだけど、そうするとそこから漏れ出てしまう作品の魅力がどうしても出てきてしまうのだ。

昔話のモチーフ分析は元々、類話を比較して共通点、差異からその話の源流を探る試みなので、情報を落とし過ぎると意味がなくなってしまうのだ。

物語の要素をこれ以上細かく分解することは難しいと思う。なので、物語構造分析の手法は約60年前には確立されていて、それから後はあまり進展が見られないという風に受け取れる。

これから先は計量文献学といった理系の研究手法などが脚光を浴びていくかもしれない。テクスト分析については未確認。

高田本では物語構造分析について他の本/著者も挙げられていたのだけど、それらの本を読んだ印象では(※まだ読了していない本もある)それらは小説や戯曲向けかなという印象である。

レヴィ=ストロースの『アスディワル武勲詩』も読んだが、彼の神話分析は類話を収集して比較する手法なので今回は割愛した。

問題はトータルで何文字くらいになるかである。前巻を超えるのは間違いない。電子書籍は何ページになろうと無問題だが、ペーパーバックだとかなり分厚くなってしまう。仕様上640ページまで大丈夫らしいので上下巻に分ければ大丈夫だとは思うが。

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行為項分析――虎の皮

◆あらすじ

 彦八が死んで閻魔さまの前へ出た。彦八は嘘ばかりついて人を騙していたから地獄だと閻魔は言った。彦八は鬼に向かって忘れ物をしたからちょっと帰らせて欲しい。来るときには虎の皮を土産に持ってくると言った。鬼は虎の皮が欲しいので許した。彦八が喜んで帰ると葬式の最中だった。柩の蓋を押し上げて生き返った彦八は心を入れ替え御法義者になった。今度死んで閻魔さまのところへ行くと成績がよいので極楽に行くことになった。そして地蔵さまに連れられて極楽へ行きかけると鬼が虎の皮を催促した。彦八はあれは嘘の皮だと答えて極楽へ行ってしまった。

◆モチーフ分析

・彦八、死んで閻魔の前に出る
・生前、嘘をついて人を騙していたから地獄行きだと言われる
・彦八、忘れ物をしたから一度戻りたいという
・鬼に虎の皮を土産にするからと許可を得る
・生き返った彦八、善人となる
・二度目に死んだ際、今度は天国行きだと告げられる
・鬼が虎の皮を欲しいと言う
・あれは嘘の皮だと言って極楽へ行ってしまう

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:彦八
S2:閻魔
S3:鬼

O(オブジェクト:対象)
O1:地獄
O2:虎の皮
O3:天国
O4:嘘の皮

m(修飾語)
m1:善人

+:接
-:離

・彦八、死んで閻魔の前に出る
(出廷)S1彦八:S1彦八+S2閻魔
・生前、嘘をついて人を騙していたから地獄行きだと言われる
(判決)S2閻魔:S1彦八+O1地獄
・彦八、忘れ物をしたから一度戻りたいという
(申請)S1彦八:S1彦八+S3鬼
・鬼に虎の皮を土産にするからと許可を得る
(約束)S1彦八:S3鬼+O2虎の皮
・生き返った彦八、善人となる
(蘇生)S1彦八:S1彦八+m1善人
・二度目に死んだ際、今度は天国行きだと告げられる
(判決)S2閻魔:S1彦八+O3天国
・鬼が虎の皮を欲しいと言う
(要求)S3鬼:S3鬼+O2虎の皮
・あれは嘘の皮だと言って極楽へ行ってしまう
(反故)S1彦八:S3鬼+O4嘘の皮

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

   聴き手(彦八は約束を守るか)
           ↓
送り手(彦八)→ 虎の皮(客体)→受け手(鬼)
           ↑
補助者(地蔵)→ 彦八(主体)← 反対者(鬼)

といった行為項モデルが作成できるでしょうか。彦八は生前嘘をついて人々を騙していたと裁定され地獄行きとなります。ところが護送中に言い訳と約束をして生き返ります。蘇生した彦八は行動を改めて善人となり今度は天国行きとなります。ところが、鬼が約束の品(虎の皮)を要求したところ、あれは嘘だったとあっさり反故にして天国に行ってしまいます。嘘をついた瞬間、地獄に堕とされてしまうといった展開も考えられますが、ここではそうなってはいません。

 彦八―閻魔、彦八―鬼、彦八―地蔵、鬼―虎の皮、虎の皮―嘘の皮、といった対立軸が見出せます。虎の皮/蘇生といった暗喩が同定できるでしょうか。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

彦八♌♁―鬼♂☾(♌)―閻魔♎☉―地蔵☾(♌)

 といった風に表記できるでしょうか。価値を天国行きと置くと、閻魔が審判者♎であることになり彦八が享受者♁となります。鬼は対立者でもありますが、彦八が蘇生する手助けもしますから彦八の援助者☾とも見なせます。地蔵は彦八を天国に連れていく役割ですが援助者☾となります。

 価値を虎の皮と置くと、

彦八♌☉―鬼♂♁☾(♌)―閻魔♎―地蔵☾(♌)

となるでしょうか。虎の皮は価値☉ですが嘘の皮でもありますので☉(-1)とでも表記できるでしょうか。

◆元型

 彦八はユングの提唱した元型(アーキタイプ)だとトリックスターに分類されます。知恵者ですが物語を引っ掻き回すいたずら者の役割です。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍はあれは嘘の皮だと反故にすることでしょうか。「彦八―嘘の皮/虎の皮―鬼」の図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.83-84.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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2024年4月13日 (土)

行為項分析――三把の藁を十八把

◆あらすじ

 昔、爺さんと婆さんがいた。娘がいていい女房だった。多くの若者が我こそは聟にと思っていた。いい聟をとろうと思った爺さんと婆さんは門口に立て札をたてた。三把の藁を十八把に数えた者に娘をやると宣言した。若者が代わる代わるやってきて、どうにか十八把に数えようと思ったが、どうしてもできない。皆、諦めて帰った。そこへ村一番の頓知(とんち)の利く者が行って、「ちょいと来ると二把(庭)ござる。なかえの隅に九把(鍬)ござる。門に三把で十八把」と答えた。感心した婆さんはこの者が聟だといって娘をやった(十四把にしかならないが話はこのようになっている)。

◆モチーフ分析

・爺さんと婆さんにいい娘がいた
・多くの若者が娘を嫁に欲しがっていた
・爺さんは門に立て札をたてお題を出す
・誰も解けない
・村一番の頓知の利く者がお題を解く
・婆さんは娘を嫁にやった

◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である

S(サブジェクト:主体)
S1:爺さん
S2:婆さん
S3:娘
S4:若者
S5:知恵者

O(オブジェクト:対象)
O1:お題
O2:嫁
O3:頓智

+:接
-:離

・爺さんと婆さんにいい娘がいた
(存在)S1爺さん:S1爺さん+S3娘
・多くの若者が娘を嫁に欲しがっていた
(求愛)S4若者:S4若者+O2嫁
・爺さんは門に立て札をたてお題を出す
(出題)S1爺さん:O1お題+S4若者
・誰も解けない
(回答不能)S4若者:S4若者-O1お題
・村一番の頓知の利く者がお題を解く
(解答)S5知恵者:S5知恵者+O1お題
・婆さんは娘を嫁にやった
(結婚)S2婆さん:S5知恵者+S3娘

◆行為項モデル

送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。

   聴き手(関心)
      ↓
送り手→(客体)→受け手
      ↑
補助者→(主体)←反対者

 この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。

  聴き手(娘を嫁に勝ち取るのは誰か)
           ↓
送り手(婆さん)→ 娘(客体)→受け手(知恵者)
           ↑
補助者(婆さん)→ 爺さん(主体)← 反対者(若者)

といった行為項モデルが作成できるでしょうか。娘は知恵のある者に嫁にやると爺さん婆さんは一見意味不明なお題を出します。誰もそのお題を解けませんが、頓智の利く知恵者が見事にお題を解いてみせます。

 爺さん―若者、婆さん―若者、娘―若者、爺さん―知恵者、婆さん―知恵者、娘―知恵者、お題―頓智といった対立軸が見出せます。頓智/結婚といった暗喩が同定できます。

◆関係分析

 スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。

♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者

という六つの機能が挙げられます。

☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。

 これらを元に関係分析をすると、

知恵者♌♁―娘☉―爺さん♂♎―婆さん☾(♂)―若者♂

 といった風に表記できるでしょうか。娘を価値☉と置くと、その贈与者である爺さん婆さんが対立者♂であり審判者♎となります。ここでは婆さんを爺さんの援助者☾としました。他の若者たちもライバルですので対立者♂とします。

 お題とその解答自体はナンセンスな内容ですが、物語の構図そのものはちゃんと成立しています。

◆発想の飛躍

 発想の飛躍はお題とその解答のナンセンスな内容でしょうか。「爺さん/婆さん―娘/頓智―知恵者」の図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.81-82.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)

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